2011 Fiscal Year Annual Research Report
細胞膜を破壊する蛋白質・ペプチドと膜の相互作用の単一巨大リポソーム法による研究
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21310080
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山崎 昌一 静岡大学, 創造科学技術大学院, 教授 (70200665)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 俊彦 静岡大学, 理学部, 講師 (60344389)
丹波 之宏 鈴鹿工業高等専門学校, 教養教育科, 講師 (50436911)
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Keywords | 生物物理学 / ナノバイオ / 生体膜 / 巨大リポソーム(GUV) / 単一GUV法 / 蛋白質毒素 / 抗菌ペプチド / ポア形成 |
Research Abstract |
1.蛋白質毒素ライセニンが誘起する脂質膜中のポア形成を単一巨大リポソーム(GUV)法により研究した。まず蛍光プローブのカルセインの水溶液を内部に含むスフィンゴミエリン(SM)/ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)-GUVとライセニンの相互作用を37℃で調べた。カルセインの膜透過は確率過程的に始まり、その後膜透過速度定数は時間とともに増加し、やがて定常的な最大値をとり、その状態が長い時間続いた。この値から求めた膜透過係数の最大値P^sは、ライセニン濃度とともに大きく増大した。この結果は、ライセニンが誘起する膜中のポア濃度が時間とともに増大し、定常的な最大値をとることを示す。SM/DOPC/コレステロール(chol)-GUVとライセニンの相互作用でも同様な結果が得られたが、低濃度のライセニンの場合にはP^sはSM/DOPC-GUVのP^sよりもかなり大きかった。ライセニンはSM/DOPC膜やSM/DOPC/chol膜と相互作用すると、SDS電気泳動で検出できるSDS耐性オリゴマーを形成した。SDS耐性オリゴマーの割合のSM/ライセニンのモル比に対する依存性は、P^sのSM/ライセニンの比に対する依存性とほぼ同じであった。この結果は、SDS耐性オリゴマーの増加とともに膜中のポア濃度が増大することを示す。一方、ライセニンは一様な秩序液体相の脂質膜であるSM/chol(6/4)膜のGUVでもポアを形成したので、そのポア形成には相分離による異なる相の境界は必要ないことを示す。これらの結果からライセニンのポア形成の素過程について考察した。 2.抗菌ペプチドのマガイニン2とジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)とDOPCの混合膜のGUVの相互作用により、膜の表面積が増加することを定量的に求めた。その結果に基づいて、マガイニン2が誘起する脂質膜中のポア形成の理論を構築した。
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