2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21310084
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Research Institution | NTT Basic Research Laboratories |
Principal Investigator |
向井 哲哉 NTT Basic Research Laboratories, 量子光物性研究部, 主任研究員 (70393775)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 富士夫 電気通信大学, レーザー新世代研究センター, 共同研究員 (00011156)
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Keywords | 極低温原子 / 原子トラップ / アトムチップ / 超伝導永久電流 / 超伝導磁束 / 量子状態制御 |
Research Abstract |
本研究では、中性原子の外部自由度を量子化レベルにまで強く閉じ込めることが第一の課題である。その実現の鍵となるのは、電線の近傍におけるトラップの捕捉安定性を改善することであり、超伝導材料と永久電流を用いてこれを行うことが、本研究の最大の特徴となっている。理論計算の予測によれば、このアプローチは捕捉安定性を何桁も改善することが期待されるものであるが、H21年度の我々の研究によって、従来の理論計算には含まれていなかった、新たな損失チャンネルの存在を示唆する結論を得るに至った。 具体的には、超伝導アトムチップの電線近傍における捕捉寿命は、超伝導体の内部に侵入する磁束が、樹枝形状のパターンを形成することにより、磁場のポテンシャルに局所的なゼロ点を作り、そのゼロ点からマヨラナ遷移による大きな損失が生じていることを明らかにした。 その一方で、この研究の過程で得た知識から、超伝導磁束を積極的に利用する新しい原子の捕捉方法を考案し、超伝導ディスクトラップとして開発することに成功した。この超伝導ディスクトラップによって、超伝導体中の磁束が、樹枝形状のパターンに崩壊する温度領域を、冷却原子を用いて計測することに成功した。 以上の結果を考慮すれば、超伝導磁束が樹枝形状のパターンへと崩壊しない特定の温度領域が存在し、その温度領域で超伝導アトムチップを動作させることで、トラップポテンシャルに局所的なゼロ点を生じさせることなく、捕捉安定性を改善できることが明らかになった。この結論は本研究の進捗に重要な意味を持つ研究指針である。
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Research Products
(8 results)