2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21310136
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
有本 博一 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (60262789)
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Keywords | バンコマイシン耐性菌 / ドッキング実験 / 抗生物質 / 光親和性標識 |
Research Abstract |
抗生物質開発と薬剤耐性菌出現は、しばしば「いたちごっこ」と揶揄されてきた。しかし、新しい抗生物質の発見,開発は近年極端に減っており、このままでは「いたちごっこ」の継続はおろか、感染症の制御自体が困難になる危惧がある。本応募課題では、バンコマイシン耐性菌(VRE/VRSA)に有効な化合物を創製して、感染症の制御に貢献する。 本年度は、私達が創出した誘導体Van-M-02が黄色ブドウ球菌の細胞膜に含まれるペニシリン結合タンパク質2と結合することを明らかにして論文発表した。さらに精製ペニシリン結合タンパク質と薬剤が結合する部位を光親和性標識と質量分析を組み合わせて同定した。In silicoのドッキング実験によって、薬剤と相互作用するアミノ酸残基も明らかにすることができた。 他方、前年度までの研究で、配座を制限したバンコマイシン2量体を合成し、抗菌活性と配座について知見を得てきた。本年度は分子動力学計算を用いて2量体の配座を解析して、抗菌活性発現に必要な「活性配座」を分子モデルとして明らかにすることができた。 また、バンコマイシン2量体の分子量が3000以上と非常に大きく、実用を目指す上で障害になる可能性を考慮して、糖鎖部分を取り除いて分子サイズ低減をめざした合成研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、自ら開発した抗菌性化合物と、細菌側の標的分子との相互作用を目に見える形で表現することに成功した。すなわち、有機化学者が理解できる構造式の形で相互作用を図示できたので、世界の創薬化学者が本研究の成果を容易に利用でき、抗菌剤研究の一層の進展に資すると考えるから。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究課題の最終年度にあたる。これまでに積み上げてきた成果を学術論文の形でまとめ、公表に注力したい。これまでに合成した化合物は、細菌の細胞壁合成に関わる酵素との直接的相互作用を持つと疑われる。精製したペプチドグリカン重合酵素と、バンコマイシン耐性菌特有の前駆体を用いたアッセイ系の構築を行って、この疑問点を解決したい。
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