2011 Fiscal Year Annual Research Report
里湖湖岸域希少植物のユビキタスモニタリング/ジェノタイピングによる生物多様性評価
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21310152
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Research Institution | Lake Biwa Environmental Research Institute |
Principal Investigator |
金子 有子 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 総合解析部門, 専門研究員 (90280817)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 壮則 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (80206755)
瀬戸口 浩彰 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 准教授 (70206647)
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Keywords | 植物 / 遺伝構造 / レッドリスト / GIS / 生物多様性 / 絶滅確率 |
Research Abstract |
1.遺伝解析 平成23年度は、クマツヅラ科の落葉小低木ハマゴウについて国内海岸集団と琵琶湖集団の遺伝的分化、琵琶湖集団の遺伝的多様性と遺伝子流動の程度を明らかにした。本種は琵琶湖では東岸に3集団が残存するのみとなっており、絶滅が危惧されている。海岸と琵琶湖岸の16集団から計425個体を採集し、核DNAのSSRマーカー6遺伝子座を新たに開発してSTRUCTURE解析と集団間系統樹による解析を行った結果、琵琶湖のハマゴウ集団は海岸集団から長期間隔離されることによる影響を受け、遺伝的に海岸集団とは異質であることが明らかになった。また、琵琶湖集団の遺伝的多様度は海岸集団よりも有意に低く、琵琶湖の祖先集団が創始者効果の影響を受けたと考えられた。一方、3世代程度の期間におけるボトルネック効果は検出されなかったことから、琵琶湖集団は現存個体数が少ないながら比較的長期間にわたって遺伝的多様性が低いままで安定していることが推測された。さらに、琵琶湖集団の集団間分化の程度は海岸集団間よりも極めて大きく、琵琶湖の現存集団はそれぞれ遺伝的に孤立していることが示唆された。このことは最近100年間における水位操作により自生地の冠水規模や頻度が激減したことで果実が水散布される機会が失われていること等に起因すると考えられた。これらのことから、琵琶湖集団は保護施策をとることが必要であると考えられる。 2.数理解析 前年度に続き、ハマエンドウ93編、ノウルシ28編、オニナルコスゲ72編、ハマゴウ57編の文献収集を行い、文献中の生活史や繁殖生態等に関するデータを整理して入力を行った。それらのデータを基にモンテカルロ法を用いたシミュレーションプログラムを作成し、プログラムの妥当性を検証した結果、文献収集によるデータに不十分な点が検出され、さらに補充すべきデータが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝解析については、現在までにハマエンドウ、ハマゴウの集団遺伝構造の解析が終了しており、ノウルシ、オニナルコスゲ、タチスズシロソウについては試料採集が完了し、マーカー開発も他の数種と共に進行している。既に目的とした研究成果が出てきており、おおむね順調に進展している。また、数理解析についても、絶滅確率推定のためのシミュレーションプログラムの作成が進んできていることから、最終年度での妥当性の検証と遺伝情報も加味しながらの絶滅確率の推定に向け、おおむね順調と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝解析については、24年度計画のノウルシの他、分析が終了ないし進行中のハマゴウ、オニナルコスゲについて補完的な分析と解析を完了させ、成果を論文化する予定である。また、モデル検証の実測値として用いるセンサスデータについては、一年生草本のタチスズシロソウ、多年生草本のハマエンドウとノウルシ、低木種のハマゴウに絞って収集することで、代表的な生活史の植物を網羅する予定である。保有する集団動態データからの推定が困難な生活史パラメーターについては、収集した各植物種の文献情報を参考にすることで補完することとする。
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Research Products
(8 results)