2011 Fiscal Year Annual Research Report
トラウマとジェンダーの相互作用:精神病理・逸脱・創造性
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21310167
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
宮地 尚子 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (60261054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 弘子 千葉大学, 大学院・専門法務研究科, 教授 (70234995)
坂上 香 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (60368066)
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Keywords | トラウマ / ジェンダー / 性暴力 / PTSD / 逸脱 / 依存症 / DV / 虐待 |
Research Abstract |
トラウマとジェンダーの相互作用を 1)精神病理的側面から、2)犯罪行為や逸脱現象の側面から、3)当事者の自助グループやメディア発信・アート表象など文化創造的な側面から明らかにすることを目的に、年間テーマを「女性の依存症と回復:トラウマの蓄積から自助へ」として以下の研究活動を行った。また、東日本大震災の発生に伴い、そのトラウマについてもジェンダー視点からのフィールドワークや研究を行った。 1)では長期のトラウマの影響を包括する「複雑性PTSD」と「Developmental Trauma Disorder」、中でも愛着の問題と解離症状に注目して、臨床事例研究や、フランク・パトナムの文献研究、最新の脳画像分析についての共同研究会を行なった。震災トラウマとジェンダーについては、論考をまとめたほか、DV被害者支援の全国大会での講演等を行なった。研究協力者野坂祐子氏らと、子どもの性被害と対策についての分析を進めた。 2)では後藤、坂上が国際犯罪学会において犯罪と女性のトラウマに関する研究発表を行なった。 3)では、坂上を中心に、薬物依存女性の自助グループ・ダルク女性ハウスとの共同プロジェクトとして、ニーズあるコミュニティとの表現プロジェクト「メディア4Youth」を引き続き行い、DVや性暴力などのトラウマ被害者やその子どもたちが自己回復や創造性に向かう流れを実践・分析した。 ・宮地は夏にイギリス、スイスのトラウマ被害者支援機関を視察し、ジョージナ・ウィンクリー氏、ヴァーナー・チャン氏等、海外研究協力者との研究交流を行った。冬には、ボストンを訪問し、ジュディスハーマン氏との翻訳事業を進める他、マイク・ルー氏等、海外研究協力者との研究交流を行った。 ・坂上はミネソタの修復的司法プログラムの視察及び資料収集を行い、後藤は韓国・台湾で関連報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災が起きたため、災害とトラウマとジェンダーという切り口が加わった。またトラウマや心のケアに対する社会の関心も広まってきたため、研究会や講演、論文執筆等の依頼も多く、さまざまな形で共同研究や研究協力の機会が増えており、研究は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的な側面の成果をさらに深めていく予定である。とくにトラウマとジェンダーがもたらす相互作用を、病理、逸脱、創造性の3つにわけて精密に記述していく予定だが、この3つのどれにあたるかを規定する社会規範や文化的環境について、DVや性暴力のみならず、災害後の動きを丁寧に参与観察することで成果があがると予測される。
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Research Products
(32 results)