2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける仏教と神信仰との融合から見た日本古代中世の神仏習合に関する研究
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21320024
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 一彦 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究科, 教授 (40230726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上島 享 京都府立大学, 文学部, 准教授 (60285244)
脊古 真哉 名古屋市立大学, 大学院・人間文化研究科, 研究員 (20448707)
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Keywords | 神仏習合 / 仏教史 / 文化交流 / 本地垂迹 / 宗教儀礼 / 日本書紀 / 密教 / 山の宗教 |
Research Abstract |
本年度、研究代表者は、日本における神仏習合思想の展開と密接に連関する、聖徳太子信仰に関する研究書『変貌する聖徳太子』(平凡社)を編著として刊行することができた。同書は、奈良・平安時代~鎌倉・南北朝時代の聖徳太子信仰の思想と文化を解明しようとしたもので、研究代表者は「序論 聖徳太子信仰を解き明かす」「聖徳太子信仰の基調」「コラム『異本上宮太子伝』の写本と内容」「コラム 親鸞の聖徳太子信仰の系譜」の四篇を担当した。研究分担者の脊古真哉は、同書で「聖徳太子絵伝の世界」を担当した。聖徳太子が神仏にも等しい聖人として信仰されていった様相の一端を解明することができた。東アジアの宗教文化の受容と日本化という面については、研究代表者は、国分寺国分尼寺に関する論集に「国分寺国分尼寺の思想」を発表して、「鎮護国家」概念の理解や、「法華滅罪」の思想の淵源について、従来説とは異なる見解を発表した。 研究分担者の上島享は、2010年刊行の研究書『日本中世社会の形成と王権』(名古屋大学出版会)が2011年度の第33回角川源義賞(歴史学部門)を受賞した。同書では、本地垂迹説の成立過程をはじめとして、神仏習合についての新知見を多く提示しているが、それらが学会から一定の評価をうけた。また、上島は日本仏教綜合研究学会の記念シンポジウムにおいて中世仏教研究の課題と論点について発表し、その後有益な議論を行なうことができた。連携研究者の佐藤文子は仏教史学会の特別例会において、日本の得度制度を中国の制度と比較する視角から論じ、最澄をどう理解するかについて発表した。また、佐藤の得度制度に関する論は、中国において論文集に掲載、刊行された。 海外調査としては、研究代表者は韓国慶州、研究分担者は中国北京などの実地調査を行ない、多くの知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した研究はおおむね順調に進展していると考えている。これまでの3年間で比較的順調に関係論文、著書を発表することができ、それらが一定の評価を得ているものと考える。また、国内外の調査もおおむね順調に進めることができ、日本ではこれまで必ずしも注目されてこなかった資料を収集することができ、また現地を踏査することができた。これらの中間的な成果に立脚して、今後、さらに研究を進めていき、予定された研究期間内に当初予想した成果を得たいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、5年間の計画で進めてきたが、これまで研究代表者の吉田、研究分担者の上島、脊古、連携研究者の佐藤のそれぞれが、論文、著書、学会報告などによって研究成果を発表してきた。今後2年間で研究成果のまとめに入り、研究代表者、分担者、連携者と、研究会にゲストで招いた講師を含めた論集を完成させて研究の総まとめとしたいと考え、計画を進めている。学術書の刊行は簡単ではなく、経済的面でのリスクもあるため、引き受けてくれる出版社が見つかるかどうかが大きな課題だと考えている。本年度中に出版社を決定し、原稿の多くの部分の執筆を進めていきたいと計画している。
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Research Products
(7 results)