2011 Fiscal Year Annual Research Report
コミュニケーションがつなぐ人とモノ:真の能動的鑑賞者育成プログラムの実践的検証
Project/Area Number |
21320043
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
福 のり子 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (10411307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 照文 京都大学, 総合博物館, 教授 (40194245)
塩瀬 隆之 京都大学, 総合博物館, 准教授 (90332759)
羽下 大信 甲南大学, 文学部, 教授 (20117021)
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Keywords | アート / コミュニケーション / 聴く / 観察力 / セルフ・エデュケーション / ワークショップ / 対人援助 / 美術館・博物館 |
Research Abstract |
最終年度に当たる本年は研究総括を全体目的とした。そのため、一昨年度から取り組んできたVTS(Visual Thinking Strategies)とACOPとの理論・実践の両面での比較を通して、ACOPをはじめとする対話型鑑賞の構造を明らかにすることを目指した。VTS開発の中心的人物であるフィリップ・ヤノウィン氏を引き続き招聘。「美的発達インタビュー(ADI)」に続き、鑑賞者の批判的思考力を記述サンプルから分析する「コーディング」手法について明らかにした。また、学習の発達段階は直線的な「成長」というよりも階段状の「蓄積」であり、「変化」であるという発達心理学の知見を得た。これらは、例えば「子ども向け」「大人向け」と単純に年齢や学齢で切り分けてきた鑑賞学習設計の限界を示唆し、今後の鑑賞プログラムへの応用など社会的意義の期待できるものといえる。これら研究成果は各年発行の「アート・コミュニケーションプロジェクト報告書」およびウェブサイト http://www.acop.jp/などにまとめた。 また、一貫して博物館が扱う資料との対話を追究してきた京都大学総合博物館大野・塩瀬のグループは、本年度はブラウン運動をとらえた資料映像でのワークショップを京都造形芸術大学北野と共同で開発。対象(モノ)が映像であっても対話を通した批判的鑑賞が可能あることを証明した。また、前年度から継続してきた「宇宙箱舟」WSを開発し、「科学的に答えの出ない問い」を通した学習プログラムの検証を行った。 甲南大学の羽下は、応用領域として検証の準備を進めてきた児童擁護施設での実践事例をさらに蓄積した。その知見は上記の京都造形芸術大学でのヤノウィン氏との共同研究に活用した。 これらの研究の総括として、ヒトがモノを鑑賞を通して「飛躍的な理解」に到達するには、さらに他のヒトの存在・関与が極めて大きいと結論付けた、また、それらをつなぐコミュニケーションは単なる発話ではなく、応答、すなわち「聴く」ことの質により大きく変化すると分かった。この「聴く」ことの研究が、今後の本分野の課題である。
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Research Products
(10 results)