2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21320054
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
吉川 信 群馬大学, 教育学部, 教授 (70243615)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 由紀夫 東京海洋大学, 海洋工学部, 教授 (10113995)
戸田 勉 山梨英和大学, 人間文化学部, 教授 (90217505)
桃尾 美佳 専修大学, 経済学部, 准教授 (80445163)
田多良 俊樹 香川大学, 経済学部, 准教授 (40510467)
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Keywords | アイルランド / 文学 / 亡霊 / ゴシック / 近代 / 小説 |
Research Abstract |
平成23年度は、「亡霊たちの現代」を主題として、19世紀末からモダニズムに至る小説作品、ならびに現代の小説におけるゴシック・亡霊譚の遺産について考察した。 いわゆる「モダニズム」文学を先導したのは、「20年代パリ」に集った「国籍離脱者」もしくは「亡命者」であり、パトロンに庇護された芸術家たちであったが、その実験的「高踏芸術」(high-art)は、いっぽうで「ナショナリズム」という、およそ「汎ヨーロピアニズム」とはそぐわない個別性と特殊性に隣接している。芸術によって「汎ヨーロピアニズム」を建て直そうという「高踏芸術」のイデアは、アイルランドの特殊性を意識したジョイスによってこそ実現されたと言える。そこで今年度、平成23年6月には、日本ジェイムズ・ジョイス協会第23回研究大会において、本研究テーマに基づいたシンポジウムをおこなった。「Dublinersの亡霊-彼ら死者の目覚めるとき」と題して、ジョイスの短篇集(Dubliners,1914)を中心に、本研究の研究代表者・研究分担者がそれぞれ、"The Sisters"のオカルティズム、"A Painful Case"のゴシック空間、"Ivy Day in the Committee Room"の亡霊たちをテーマに掲げ、モダニスト・ジョイスの「ゴシック性」を論じあった。 その後、夏の研究集会においては、ジョイス以後の作家たち、Elizabeth Bowen(1899-1973)やsamuel Beckett(1906-89)の作品に関する研究発表をおこない、アングロ=アイリッシュという支配階級の過去が、現代のカトリック・アイルランドにどのような影を落としているか-あるいは過去に愚依されているか-が考察の対象となった。 3年間に亘る共同研究の最後におこなわれた平成24年1月の研究集会では、現代のカトリック・アイルランドを代表する作家John Banville(1945-)、未だコロニアル状況下にある北アイルランドを拠点とした作家Deadre Madden(1960-)、ならびに現代のイギリス小説を牽引する作家Kazuo Ishiguro(1954-)の作品に、過去と記憶の問題を探り、現代小説の抱く「亡霊性」を考察した。
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Research Products
(19 results)