2011 Fiscal Year Annual Research Report
14-16世紀イギリスの写本、印刷本を対象としたデジタル書物学的研究
Project/Area Number |
21320059
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松田 隆美 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (50190476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 聡子 慶應義塾大学, 文学部, 助教 (60453536)
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Keywords | 中世イギリス文学 / 書物文化史 / XML / キャクストン / 時祷書 / 書誌学 |
Research Abstract |
16世紀に刊行された「セイラム式」時祷書に関して、デジタル・エディションを作成し、ウェブ・ブラウザでの閲覧を可能にした。15世紀末から16世紀中期にかけて刊行された印刷本の時祷書の学術的校訂版は未だ存在していない現状を考慮すると、XMLによってタグ付けをした2種類のトランスクリプション(diplomaticと略字展開版)で構成されるこのエディションの作成は有意義である。15世紀イングランドの宗教文学写本(大英図書館蔵Additional 37049写本)のテクスト本文と挿絵の相互補完性に関して、挿絵の機能を分類して分析する論文を発表した。また、近代初期にヨーロッパで刊行されたギリシャ・ローマ神話学関連図書約100点について書誌を完成させ、『羊飼いの暦』の初期刊本の比較研究にかんして時祷書との類似点をさらに精査した。 オクスフォード大学が主催した「デジタル人文学ワークショップ」に参加し、XMLによるウェブコンテンツ制作に関する最新の動向について学ぶとともに、この分野をリードする関係者とのネットワーク構築をはかった。それに基づきキャクストン版『カンタベリー物語』を例に、今後の初期刊本のXMLエディション構築の方向性を検討した。 写本から印刷本文化の移行期に印刷された初期刊本では、頭文字や欄外注釈などは印刷後に手書きで追加された。キャクストン版に関しては、これまでにもその重要性は指摘されてきが体系的な研究はいまだない。そこで本研究では手書き頭文字に注目し、キャクストン版『ポリクロニコン』を具体例として取り上げ、約25点の現存本の調査を行った。それに基づき手書き頭文字の種類の分類や読書に与える影響などに関する考察を国際学会で発表し、パラテクストの一要素であるこうした情報を貴重書のオンラインカタログやXMLエディションにも反映させる意義を提示した。 写本および初期刊本の比較研究を応用して、中世イギリス文学に関する論考を発表した。
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Research Products
(5 results)