2009 Fiscal Year Annual Research Report
西アジアにおける墓地の成立-考古学と自然科学の成果から-
Project/Area Number |
21320145
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
常木 晃 University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (70192648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 穣 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (30280712)
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Keywords | 西アジア / 新石器時代 / 墓地 / 葬送 / 形質人類学的分析 / 同位体比分析 / 食性 / 親族構造 |
Research Abstract |
研究代表者が調査を継続しているシリア北西部のエル・ルージュ盆地に所在するテル・エル・ケルク遺跡の発掘調査で検出された新石器時代の墓地は、現在までに判明している屋外型の本格的な墓地として西アジアで最も古く、世界史的に見ても最古の墓地と考えられる。本研究は、この墓地の考古学的な研究を行うとともに、そこからの出土人骨を対象とした自然科学的な研究を実施することにより、当時の人々の社会生活、精神生活を解明するとともに、西アジアの埋葬史の中にこの墓地を位置づ墓地が成立する意味を正しく理解することを目的としている。 研究初年度となる平成21年度は、まず夏季のテル・エル・ケルク遺跡の発掘調査時に研究代表者と研究協力者が現地に赴き、墓地からの出土人骨にかかわる考古学的・形質人類学的調査を実施した。全体的な年齢、性別構成をはじめ、各人骨の病理痕跡などを探るとともに、自然科学的分析のために長骨、第3臼歯を中心としたサンプリングを行い、シリア政府の許可を得て研究資料として日本に持ち帰った。研究分担者は、研究協力者とともに人骨、食性比較のための動物骨を対象として、炭素同位体比、窒素同位体比分析を実施し、墓地に埋葬されていた人々の食性についての基本的な情報を得ることができた。また、人骨そのものから放射性炭素年代測定を行い、墓地の上層の人骨は、紀元前6300-6000年ごろに年代づけられた。 これらのデータに基づいて、ケルク新石器時代人の社会生活や墓地の全体像などについて研究を進めており、中間的な成果についての研究発表なども行っている。
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