2011 Fiscal Year Annual Research Report
西アジアにおける墓地の成立-考古学と自然科学の成果から-
Project/Area Number |
21320145
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
常木 晃 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70192648)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 譲 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (30280712)
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Keywords | 西アジア / 新石器時代 / 墓地 / 葬送 / 親族構造 |
Research Abstract |
研究代表者が調査を継続してきたシリア北西部のエル・ルージュ盆地に所在するテル・エル・ケルク遺跡の発掘調査で、紀元前6500年に遡る新石器時代の墓地が検出された。この墓地からは現在まで240体もの人骨が出土しており、これまでに判明している屋外型の本格的な墓地としては西アジアで最も古く、世界史的に見ても最古の墓地と考えられる。この墓地は数百年の間テル・エル・ケルク集落の人々によって使用されていたと思われるが、一次葬、二次葬、火葬など様々な墓制が認められる。これらの資料を多角的に研究することで、食性や婚姻関係、社会ランクといった社会生活の実態に関わることから、信仰や葬送、他界観、火葬の意味などといった精神生活に関することまで、西アジア新石器時代の人々についての多様で貴重な手掛かりが得られる。本研究では、考古学的な研究と人骨を対象とした自然科学的な研究を実施し当時の人々の社会生活、精神生活を解明するとともに、西アジアの埋葬史の中にこの墓地を位置づけ墓地が成立する意味を正しく理解することを目的とした。 本研究の最終年度となる平成23年度は、シリアの政情不安のために夏季に予定していた現地での補足調査は実施せずに、これまでの研究の取りまとめに集中した。西アジア埋葬史に関する研究では、ケルク新石器時代墓地が世界でも最も古く屋外型共同墓地として登場するまでの社会背景の歴史過程を描くことに努めた。副葬品などから、それぞれのパーソナルヒストリーや当時の他界観などについても研究を進めた。人骨資料のアイソトープ分析においては、墓地内の中での微細な差異を抽出することができ、血族ごとに食生活が異なっていた可能性を指摘するとともに、さらに婚姻などで盆地外から移住した人物を特定することができた。
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Research Products
(10 results)