2011 Fiscal Year Annual Research Report
旧石器時代洞窟遺跡における人骨の探求とその生活跡の調査
Project/Area Number |
21320147
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
阿部 祥人 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (90175919)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 孝雄 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (20269640)
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Keywords | 旧石器時代人骨 / トラピーズ / カショロン / 動物骨 / 石器(狩猟具) |
Research Abstract |
本研究の最終年度である平成23年度の当初は、過去2年間の青森県下北半島の尻労安部洞窟の調査の各種資料の整理と遺跡から研究室に持ち帰った水洗選別用の土壌の処理に多くの時間を割いた。その後6月以降は、夏期の発掘調査の準備を開始し、7月初旬からの現地調査に満を持して臨んだ。 最大の目標である旧石器時代人骨の発見に向け、その年代に属する13~15層の発掘面積の拡張・確保に全力で取り組み、そのための学生アルバイトは最大で、1日20名を超すこととなった。これにより、この遺跡では過去に例のない面積の調査が実施でき、13層において、あらたに「トラピーズ(台形石器)」という本州北端の地には極めて稀な狩猟具の発見に至った。 この石器はその石器製作技術や形態がユーラシア出土のものに近似し、しかもかなり頻度の高い使用の痕跡を持つ点が注目される。そして、それ以上に、その石質が「カショロン」というシベリアにのみ産するという、岩石学者の驚くべき鑑定があった。その重要性に鑑み、調査終了後、慶應義塾大学理工学部との連携により、シベリア産原石と本遺跡出土の「トラピーズ」とのX線解析などによる比較分析などを行った。その結果、両者は極めて類似した元素組成をもち、下北半島出土の石器がシベリア産の原石である可能性が高まった。 所期の目的である旧石器時代研究の安定化のための3種の資料、すなわち、石器(狩猟具)、動物骨・人骨の共伴した形での検出は、人骨以外に関しては、これをこの調査で達成しえた。この原石のもつ意義は、未だ人骨そのものは得られていないが、当事のヒトが辿ったであろうダイナミックな足取りの一端を示す可能性があるものである。これは本遺跡・本研究による1つの大きな到達点であるといえる。
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Research Products
(4 results)