2009 Fiscal Year Annual Research Report
新潟県卯ノ木泥炭層遺跡の発掘調査による縄文文化形成期の古環境と生業の研究
Project/Area Number |
21320148
|
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
谷口 康浩 Kokugakuin University, 文学部, 准教授 (00197526)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 邦夫 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (10272527)
|
Keywords | 考古学 / 先史学 / 環境変動 / 古植生 / 泥炭層 / 花粉分析 / 地滑り / テフラ |
Research Abstract |
更新世から完新世への移行とともに進行した縄文文化の形成期における古環境と生業の実態を研究するために、平成21年9月に新潟県津南町卯ノ木泥炭層遺跡の発掘調査を実施した。今年度は縄文時前期の上部泥炭層の調査を中心に行い、植物遺体の分析による植生史復元、可食植物の特定、食料残滓の検出等を行った。また長期的な環境史を把握するために、遺跡周辺の段丘地形と火山灰層序の地質学調査ならびに津南町菅沼湿地のボーリング調査を実施した。平成22年3月に國學院大學において年次報告会(公開)を開催し、研究分担者・連携研究者・研究協力者6名が今年度の研究成果を発表した。考古学調査では泥炭層中から縄文前期の土器、下層のシルト層から早期・草創期の土器の出土が確認され、層序と考古年代が把握された。古植生調査では泥炭層出土木材316点の樹種が同定され、河畔林とブナ林の構成種を中心に遺跡周辺の森林の組成が復元された。種子・果実類の分析では、泥炭層および下部シルト層の土壌試料から約5000個の遺体が篩い出され、木本23分類群、草本55分類群が同定された。検出された栽培種にはアサ・ヤマゴボウがある。花粉分析からは、泥炭層層準におけるブナ林・クリ林の優勢な状態が復元され、とくに虫媒花であるクリ花粉の組成率の著しい高さから、河畔でクリが人工的に栽培されていた可能性が報告された。地質学・堆積学および年代測学の分析からは土層の堆積環境とテフラの同定結果が報告され、草創期の約12,500BPに対岸側山地の地滑りによって信濃川が一時的に堰き止められ、そのことが泥炭層の形成や当地域の草創期遺跡群の活発な動向に関係していた点が考察された。今年度は土器出現期にあたる縄文草創期の泥炭層の発掘には及ばなかったものの、縄文早期から前期にかけての遺跡周辺の古植生・景観・堆積環境と人間の生活実態を知るための詳細なデータを収集することができた。
|
Research Products
(6 results)