2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21330016
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大塚 裕史 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40304290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上嶌 一高 神戸大学, 法学研究科, 教授 (40184923)
小田 直樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (10194557)
宇藤 崇 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30252943)
池田 公博 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (70302643)
嶋矢 貴之 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (80359869)
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Keywords | 医療事故 / 過失犯 / 刑事裁判合意手続 / 麻酔事故 |
Research Abstract |
実体法に関する実績として主として次の3つの業績を公表した。まず、医療事故と違法論の研究担当者が、医療行為の際の行為の捉え方につき「行為」を「交渉過程」として「全体像」として捉えるべきこと、終末期医療についての実体法・手続法的問題につき、死期の切迫や患者の意思の実体面よりも、患者(家族)と医師のコミュニケーション過程を重視すべきであること、医療問題に関する刑法の役割も上記過程を重視し介入を抑制・制約されるべきことを明らかにした(後掲・小田論文)。終末期医療の刑事責任迫及につき、行為過程から処罰の抑制を行おうとする重要な提言である。次に、手術の際に麻酔および全身管理を担う麻酔医に着目し、麻酔事故の特殊性を分析し、その刑事裁判例につき、麻酔実施過程の過誤と患者管理過程の過誤に分けて検討を加えた(後掲・大塚論文)。その上で、事故段階や関与者に応じて類型化し詳細な判例分析を行った。最後に、日本の医療事故を含めた過失犯判例について包括的な調査・研究の成果を公表した(後掲・著書上嶌担当部分)。そこでは、過失犯の構造に関する最新の議論整理、過失行為、予見可能性、過失の標準、信頼の原則、管理監督過失に関する刑事過失についての最新の理論分析、判例の網羅的分析を行った。また、同書では、分担者嶋矢により、過失共犯に関する理論的検討も行った(後掲・著書嶋矢担当部分)。 また、手続法的研究としては、研究目的に掲げた刑事手続外の利益を考慮する法制度についての研究につき、後掲池田の雑誌論文の掲載をみた。同論文では、ドイツにおける判決申合せ実務につき、ドイツの裁判例、立法過程およびその内容を紹介し、刑事手続における諸原則と刑事手続外の利益を考慮する法制度の具体的な整合性に関する議論を明らかにしている。これは医療事故調査の議論にも応用可能な議論を含むものである。 以上のほか、研究組織全員が参加する研究会で、実務家と共に刑事過失に関する研究報告・討議を行い、知見を共有した。
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