2010 Fiscal Year Annual Research Report
公正使用の法理に関する総合的研究―著作権の侵害主体の観点から
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21330022
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
潮海 久雄 筑波大学, 大学院・ビジネス科学研究科, 教授 (80304567)
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Keywords | 公正使用(フェアユース) / 著作権の侵害主体 / 間接侵害 / 引用 / 個別制限規定 / インターネット |
Research Abstract |
地図やデータベースなど事実著作物における新しいビジネスにおける公正使用(フェアユース)の法理の必要性について法理論的検討をおこなった。引き続き、特許法の間接侵害規定、共同直接侵害について検討した。 さらに、引用規定などの個別制限規定をサムネイルのほかインターネットやデジタル著作物における新しい利用形態に拡大適用することの限界と弊害を主張した。その際、わが国と同様に個別制限規定を採用するドイツにおいて引用規定の拡大適用を否定したサムネイルのBGH判決、およびわが国の近時の裁判例を素材として検討した。これまでのわが国の学説が裁判例の引用の2要件への批判に集中し「引用の目的」を定義せず一般条項のように解釈しようとしてきた点を批判的に検討した上で、すでにわが国の裁判例も引用規定について一般条項における諸要素を勘案する経験をつんでいること、著作権の一般制限規定を導入したからといって、個別の権利制限規定とあわせて考えると、必ずしも著作権制限の範囲が広がるわけではないことを明らかにした。むしろ、インターネット上のさまざまな利用行為に関わる利益状況-技術的保護手段が容易かなどの技術環境によって変わりうる-が変化しているにもかかわらず、著作権の支分権は一般規定のままであり、あらゆる著作物の多様な利用について権利制限の一般規定による適切な利益考量の機会がもうけられることの必要性が高くなっていることを主張した。以上の成果を筑波法政50号で公表した。
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