2011 Fiscal Year Annual Research Report
公正使用の法理に関する総合的研究-著作権の侵害主体の観点から
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21330022
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
潮海 久雄 筑波大学, ビジネスサイエンス科, 教授 (80304567)
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Keywords | 公正使用 / 侵害主体 / 間接侵害 / アメリカ法 / 著作権法 / 著作権の制限 / 引用規定 |
Research Abstract |
本年度は、まず、ヨーロッパ法において、著作権制限の一般規定に関する議論、および、著作権の侵害主体の議論を調査・検討した。 とりわけ、筑波法政50号の論文で、ドイツの最高裁判決(Googleのサムネイル)を契機に、個別制限規定(引用規定)をサムネイルに適用することの限界がドイツの判例・学説で認識され、ドイツ法のような大陸法においても一般的制限規定(フェアユース)の必要性が主張されていることを明らかにした。その上で、わが国の引用規定に関して、「引用」を定義せずに柔軟ないし拡張的解釈を主張する学説・判例の解釈論を批判的に検討した。個別制限規定の拡張解釈は、一般的制限規定が立法された場合以上に著作権の制限の範囲が広がりうることを論証した上で、個別制限規定と一般的制限規定(フェアユース)を一体として解釈すべきことを主張した。 また、特許権の間接侵害についてアメリカ法、日本法、ヨーロッパ法を調査した。そのうちのアメリカ法、日本法の成果が、知財研フォーラム87号の論文である。特許権の間接侵害規定、教唆・幇助規定、共同直接侵害行為についても、アメリカ法を中心に、著作権法の侵害主体の問題(著作権の間接侵害)と比較しつつ検討を行った。その結果、同じネットワーク技術に関する著作権侵害行為についても、間接侵害行為と直接侵害行為の区別が困難となりつつあるという知見を得た。また、ヨーロッパ法において、不法行為との関係が問題となるため、この点についても調査・研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
著作権の侵害主体のみならず、特許権の間接侵害の問題に広げて検討した結果、さまざまな侵害行為態様とともに、著作権侵害主体の問題についてもさまざまな新たな重要な理論的問題を発見することができたからである。また、欧州滞在の成果として、この問題は重要な問題でありながら、世界中が悩んでおり結論がでていないことが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
公正使用および侵害主体の問題は著作権法のみならず、特許法の重要問題にも関わるため、一つ一つの個別問題についての検討を地道に積み上げていく予定である。
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