2011 Fiscal Year Annual Research Report
未(非)承認国家をめぐる国際関係に関する学際的研究
Project/Area Number |
21330038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中井 和夫 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40188868)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 淳 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90285081)
遠藤 貢 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70251311)
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Keywords | 国際政治 / 国際法 / 未承認国家 / 国家承認 |
Research Abstract |
今年度も本研究の目的に沿った研究活動が精力的に推進され、豊富な研究成果へと結実している。具体的には、まず、「未(非)承認国家」をめぐる研究活動のための基盤整備、とりわけ関連文献・資料の収集がこれまでと同様に進められた。これら文献は、本研究の学際性を反映して、内戦や国家破綻、国際政治や国際法、さらにアフリカ、旧ソ連地域の歴史や政治など、きわめて広範な分野に及んでおり、その多くが東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラムの図書室の蔵書として広く閲覧の対象とされている。また、連携研究者の阪本が担う未承認国家のマッピングについても、その基礎となる資料の収集が引き続き進められた。さらに、海外調査については、連携研究者の柴がクロアチア、ボスニア、ポーランドを訪れ、バルカン諸国の紛争と和解、地域的な協調に関する学会発表を行ったほか、史料収集などの活動を精力的に展開した。そのほか、研究代表者・分担者らによる学術的な研究成果が、今年度も続々と生み出され、さまざまな場で公開されている。「移行期の正義」「保護責任」といった国家破綻と密接に関わる概念に理論的な検討を加えた石田の研究、ソマリア・ソマリランド・南スーダンといった事例を中心に、国家破綻や未承認国家をめぐるアフリカと国際社会との関わりをさまざまな角度から考察した遠藤の研究、国家破綻の状況下における国連の暫定統治を国際法の観点から検討した連携研究者・西村の研究、あるいはソマリアを含むアフリカの角地域におけるさまざまな国家破綻や「事実上の国家」形成の過程を、シミュレーション・地理情報システムといった多様な方法論を駆使して分析した阪本の研究など、その内容はきわめて多彩である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
未(非)承認国家およびこれをめぐる国際政治力学を歴史的、理論的、実証的な観点から多面的に推進するという本研究の大きな目的は、上記のようにこのテーマをめぐる豊富で多彩な研究成果が研究分担者・連携分担者たちによって現に生み出されているという事実に鑑みれば、おおむね順調に達せられていると考えて良いであろう。ただし、本研究が目指す、各地域における「未(非)承認国家」のデータベースの構築については、関連する地理空間データ(紙地図等も含め)が当初の予想以上に欠乏しているため、この面で作業の進展に相当の支障が生じていることは否定できない。
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Strategy for Future Research Activity |
文献資料収集など研究基盤の整備、およびこれらに基づく研究成果の生成とその積極的な公開は、今後もこれまでと変わらずに進めていきたい。作業に遅れが生じている上述の「未(非)承認国家」のデータベースの構築については、基本となる資料の収集を急ぐ一方で、場合によっては別の成果物で補うことも検討する。具体的には、連携研究者の阪本がアフリカ各国の地理空間データを活用した、国家の破綻と生成をめぐるシミュレーションモデルの構築・改良を進めているので、こうしたモデルに基づいて、「未(非)承認国家」生成をめぐる新たな分析枠組みを提示することも視野に入れている。また、昨年度は実施できなかった外部の研究者を招いた研究会等を実施することで、プロジェクト外の研究者との交流と研究成果の還元をより積極的に進めていきたい。
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Research Products
(16 results)