2011 Fiscal Year Annual Research Report
時間割引アノマリーと異時点間選択行動の経済分析:負債保有、肥満、喫煙行動への含意
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21330046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 新介 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (70184421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
田中 敬一 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (00381442)
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Keywords | 時間割引 / 双曲割引 / 負債 / 喫煙 / パネル / 時間選好率 / アンケート / ナイーブ |
Research Abstract |
1.平成22年度にインターネットを用いて行った「時間とリスクに関するアンケート調査」のデータを用いて、双曲割引や符号効果という時間割引率特性が負債行動とどのような相関を持つかを検証した。特に、締め切りのある仕事をどの程度早めに行うかについての計画と実際に関する回答のデータ回答データから、回答者をソフィスティケイトであるのかナイーブであるかを識別し、その上で、双曲割引と負債の相関が両タイプの間で有意に異なることを示した。研究結果は、Ikeda and Kang (2011)としてDPの形にまとめられた。 2.喫煙行動に及ぼす影響についてパネル分析を行い、Kang and Ikeda (2011)としてDPにまとめ、国際誌に投稿した。国際誌からは改訂の要請があり、コメントにしたがった改訂版を再度投稿した。 3.時間選好率が富の減少関数である場合に、2国経済における財政政策や選好ショックが従来の結論とどのように変わってくるかを分析し論文にまとめた。同論文をJournal of Economicsに投稿したところ、強い改訂の要請があった。 4.双曲割引による時間非整合的行動がもたらす不利益とそれに対する対策をテーマとした書物を出版するための準備作業を行った。分析結果の整理、出版社との交渉、スケジュールの設定、文献の整理、全体を紹介する序章の草稿執筆などである。 5.平成24年度への繰り越し分については、消費者の時間選好率を推定するために、エアコンや冷蔵庫など耐久電気機器の省エネ機能と価格のPOSデータを、東北大震災後まで整備した。そのうえで、まず2007年時点のデータを用いて予備的な分析を行った。その結果、同時点では、省エネ機器の価格データから推定される時間選好率は一般非耐久財消費データから推定されるものよりも高く、したがって、省エネ機能が市場で効率的に取引されていないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間割引と、双曲割引や符号効果などの割引効用アノマリーが人々の行動に対して及ぼす影響について、理論と実証の両面からいくつかの新知見を加えることに成功し、Journal of Health Economics などトップジャーナルを含む学術誌に発表できた。また、インターネットを用いたアンケート調査や省エネ型耐久消費財価格のPOSデータなど、ユニークなデータが本科研費によって調達され、独創的な研究の一助になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の方策にしたがって研究を推進する。 1.双曲割引と負債についての研究(Ikeda and Kang (2011))、喫煙行動についてのパネル分析の研究(Kang and Ikeda (2011))など、未公刊論文の完成度をあげて、査読誌への出版に尽力する。 2.省エネ型耐久電気機器のPOSデータの整備を完了し、時間選好率の推定と省エネ機器取引の効率性について分析を進める。 3.双曲割引による時間非整合的行動がもたらす不利益とそれに対する対策をテーマとした書物を出版する。
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Research Products
(5 results)