2012 Fiscal Year Annual Research Report
時間割引アノマリーと異時点間選択行動の経済分析:負債保有、肥満、喫煙行動への含意
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21330046
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 新介 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (70184421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 敬一 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (00381442)
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 双曲割引 / 時間割引 / 時間選好 / 負債 / 肥満 / 喫煙 / 意志力 / 符号効果 |
Research Abstract |
1.時間選好率が富に関して逓減的である場合の含意を2国世界経済モデルによって明らかにし、Hirose and Ikeda (2012, JOE)とHirose and Ikeda (2012, JEDC)として出版した。前者では1財モデルで動学的な見地から政策含意を解明したのに対して、後者では2財モデルで交易条件の変化を考慮した場合の分析を行った。時間選好率が富の減少関数であることは実証的にサポートされる性質であるにもかかわらず、理論的な分析は文献上数少ない。その意味で貢献は意義深い。 2.中国復旦大学の学生を被験者として時間割引率を推定する経済実験の結果を論文にまとめ、双曲割引と先送り行動の関連性を示唆する結果を示した。論文はSasaki et al. (2012) の形で出版された。 3.肥満、負債、喫煙、ギャンブル、先延ばしなど、人びとの自損的行動と双曲割引の関係を理論と実証の双方から解明し、政策対応を考察した一般向け著書池田(2012)を出版し、第55回日経経済図書文化賞を受賞した。同書は本科研研究をベースにし、その研究成果を社会に発信したものである。 4.意志力を考慮した消費者モデルを考案し、消費・貯蓄選択と時間選好形成への含意を明らかにした。その成果を行動経済学会会長講演で報告し、行動経済学会機関誌に発表した。 5.平成25年度への繰り越し分を用いて、International Atlantic Economic Society総会ウィーン大会に共同研究者とともに出席し、(1)逓減的時間選好率下の資本蓄積を分析した研究と、(2)時間割引が健康関連行動に及ぼす影響を検出した論文を報告し、各国の研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間割引と、双曲割引や符号効果などの割引効用アノマリーが人々の行動に対して及ぼす影響について、理論と実証の両面からいくつかの新知見を加えることに成功し、Journal of Health Economics、Journal of Economic Dynamics and Control など代表的な査読誌を含む学術誌に発表できた。 また、インターネットを用いたアンケート調査や省エネ型耐久消費財価格のPOSデータなど、ユニークなデータが本科研費によって調達され、独創的な研究の一助になっている。 研究成果は日本語の著書として出版され、出版賞(日経・経済図書文化賞)を授与されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の方策にしたがって研究を推進する。 1.双曲割引と負債についての研究(Ikeda and Kang (2011))、喫煙行動についてのパネル分析の研究(Kang and Ikeda (2011))など、未公刊論文の完成度をあげて、査読誌への出版に尽力する。 2.著書池田(2012)をベースにして、双曲割引による時間非整合的行動がもたらす不利益とその対策をテーマとした、英語その他の言語による書物を出版する。 3.意志力に関して行った研究の完成度を高め、国際査読誌への出版に尽力する。
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Research Products
(11 results)