2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21330054
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 章 東京大学, 教養学部, 特任教授 (30317309)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 経済政策 / 経済理論 / エネルギー全般 / 環境政策 / 気候変動 |
Research Abstract |
本研究の目的は,長期環境政策との整合性,エネルギー政策との整合性,国内外の政治経済への配慮などの観点から炭素市場形成を政策当局がいかなる形で誘導するべきかについて,経済分析を行うものである.これにより,環境経済学と金融経済学・ファイナンスを統合した考え方を提示する.本年度は以下のような研究を実施した. まず,市場の設定(多様性と柔軟性のある排出枠発行方式の研究)については,前年度まで,排出枠と価格変動の関係に注目し,価格変動を抑制する機能である「セーフティーバルブ」について,理論的な分析,特にセーフティーバルブ設定のルールについて検討を進めてきたが,本年度は,それをもとに政策提言について議論を深めた. 次に,監視と制御(排出権デリバティブ市場規制政策の研究)については,前年度までは,排出権デリバティブの適正価格算定理論(プライシング)の構築,および,環境・資源経済問題一般に対する金融工学的手法の適用について検討を進めてきた.本年度も引き続き同様の検討を進め,環境経済学と金融経済学・ファイナンスの関わりについて汎用性の高い理論体系を考察した. 最後に,長期的育成(制度移行長期計画の研究)については,前年度までは「環境の質」や「エネルギーセキュリティー」の観点から長期的な制度設計と最適停止問題の枠組みについて分析を進めてきた.本年度も引き続き同様の検討を進めるとともに,より高度な確率制御理論を用いた最適停止問題,特異制御問題等について分析した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は環境経済学と金融経済学・ファイナンスを統合した考え方を提示することを一つの大きな目標としている.これまで,排出枠価格変動を抑制する機能である「セーフティーバルブ」,排出権デリバティブ,環境・資源経済問題一般に対する金融工学的手法,確率制御理論を用いた最適停止問題や特異制御問題等について研究を進めており,順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,これまでの研究成果を総括する形で,研究を進めていく.市場の設定(多様性と柔軟性のある排出枠発行方式の研究)については,「セーフティーバルブ」を中心に政策的含意を考察する.監視と制御(排出権デリバティブ市場規制政策の研究)については,環境経済学と金融経済学・ファイナンスの関わりについて理解を深める.長期的育成(制度移行長期計画の研究)については,最適停止問題,特異制御問題等の応用について分析を進める.
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