Research Abstract |
当該年度は,研究実施計画に沿って,制度生態系の理論構築とその政策論への展開に取り組んだ。特に実地調査に重きをおき,2010年6月には北海道の帯広市・更別村,同年7月・8月には山梨県韮崎市・北杜市において地域通貨の流通実態調査を行った。 その主要な成果は,「社会活動による貨幣意識の差異-地域通貨関係者と金融機関関係者の比較から-」(『企業研究(中央大学)』所収),「制度生態系の理論モデルとその経済学的インプリケーション」(『進化経済学論集』第15集所収),「地域通貨流通実験にみるミクロ・メゾ・マクロ・ループの流れ」(『進化経済学論集』第15集所収)に示されており,貨幣意識調査と制度生態系モデルを精緻化した上で,貨幣意識と貨幣制度生態系の関係を理論的および実証的に考察した。また,東京都武蔵野市の地域通貨流通実験,分散的発行通貨と集中的発行通貨の特性比較,進化主義的制度設計に関する研究も継続し,それらの成果を4つのワーキング・ペーパーとして公開した。 以上の論文に基づき,地域通貨に関する国際カンファレンスでは,研究協力者である栗田健一氏(北海道大学大学院経済学研究科専門研究員)とリサーチ・アシスタントである宮崎義久氏(北海道大学大学院経済学研究科博士後期課程)を交えて3つの報告を行った。また,進化経済学会第15回大会では,研究協力者である小林重人氏(日本学術振興会特別研究員)と栗田健一氏(北海道大学大学院経済学研究科専門研究員)を交えて,企画セッション「制度生態系アプローチの理論と応用」を開催した。 以上の研究成果に至る過程で計5回の会議を実施し,研究メンバー間における情報の共有化に努めた。特に,3月(名古屋)の全体会議では,昨年に引き続きエンパワメント評価手法の専門家(福岡女子大学和栗百恵氏)を招いて,研究メンバー自身による研究進捗のアセスメントと評価を行った。
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