Research Abstract |
本年度は,研究実施計画に沿って,制度生態糸の理論構築とその応用政策論に取り組み,地域ドックのための調査研究(山梨県韮崎市・北杜市で地域通貨「アクア」のアンケート調査,大阪府寝屋川市「げんき」・兵庫県丹波市「未杜」の聞き取り調査,北海道更別村公益通貨「サラリ」のアンケート調査,及び,分析結果のフィードバック)を継続実施した。新たに,ゲーミング・シミュレーション(電子地域通貨による)手法の活用可能性を検討した。 公刊論文としては11本(小林・栗田・西部・橋本「地域通貨流通実験にみるミクロ・メゾ・マクロ・ループの流れ:メゾレベルの貨幣意識を中心にして」,橋本・西部「制度生態系の理論モデルとその経済学的インプリケーション」,西部・草号「コミュニティ・ドック」,西部「コミュニティ通貨=統合型コミュニケーション・メディアの経済学的意義」「コミュニティ通貨のメディア・デザインとコミュニティ・ドック:進化主義的制度設計による新たな政策論の展開」,西部・三上「電子地域通貨のメディア・デザインとコミュニティ・ドックへの活用可能性:ゲーミング・シミュレーションによる検討」等)が挙げられる。 進化経済学会第16回大会では,企画セッション「メディア・デザインによる地域政策:コミュニティ・ドックとコミュニティ通貨」を主催,研究代表者・分担者に加え,研究協力者(小林重人氏,栗田健一氏,吉田昌幸氏)らが参加して,6本の共著・単著論文(『進化経済学論集』第16集所収)が報告された。また,同大会ではパネルディスカッション「地域通貨ねやがわ「げんき」の現在と展望」を主催し,草郷が司会を担当,パネラーとして「げんき」関係者4名と西部が参加した。 今年度は3回の全体会議(札幌,金沢,東京)を実施して研究メンバー間の情報共有に努め,3月の全体会議でエンパワメント評価(福岡女子大・和栗百恵氏司会)を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外の実地調査や各班の研究内容について当初の計画通りには進んでいない面もあるが,他方で当初の計画にはなかった新たな発見や研究成果が出つつある。毎年,相当数の論文を公刊しているだけでなく,進化経済学会で企画セッションやパネルディスカッションを組織するなど,積極的な成果発信を継続的に実行しており,総じて順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度にあたり,メディア・デザインと地域ドックの各班別研究の位置づけと関連を再整理しつつ,制度生態系の理論体系に基いて各班別研究を統合化するとともに,その成果公表・国際的発信に重点をおく必要がある。理論班における制度生態系の理論モデルとその実例としての貨幣制度生態系や貨幣意識調査,エージェント・シミュレーションとの相互関連,地域ドック班とメディア・デザイン班の幸福度・住民意識調査,通貨流通ネットワーク分析,ゲーミング・シミュレーション等の相互関連を再検討し,その成果を全体研究へとフィードバックする。その成果を広く公表するため,既存の成果を英文化して海外の学会で発表し,海外のジャーナルに投稿するほか,本研究の主要な成果を収めた論文集の出版を企画立案する。平成24年8月には北海道大学にて国際ワークショップを開催し,海外研究者を2名招聘する予定である。
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