2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21330079
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 隆 慶應義塾大学, 商学部, 教授 (90118935)
鷹岡 澄子 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (10361677)
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Keywords | 価格形成 / 動学分析 / 社債市場 / 株式市場 / 証券市場 / 引受業者 / 新規株式公開 / 評判 |
Research Abstract |
日本社債市場における引受証券会社選択の要因と影響を検証するために、平成21年度に構築したデータベースをさらに拡充した。社債発行条件のリソースであるThomson Oneデータベースをもとにして、発行企業の財務データやマクロデータ、各発行企業や引受証券会社の市場構造や市場でのランクなどのデータを追加した。証券業界はサンプル期間中(1992年1月1日から2009年12月31日まで)に金融業界の合併や持ち株会社化が行われており、産業構造を調べるためにすべての引受証券会社のサンプル期間中の変遷を詳細に調べた。データベース拡充と同時に、引受証券会社選択の要因と、手数料・スプレッドへの影響の検証を始めた。発行条件だけでなく、発行企業と引受証券会社の市場での評判が引受証券会社選択の問題において重要なことが分かった。これは、評判が良ければ選択してもらえるという単調な関係ではなく、発行企業と同程度の評判の引受証券会社が選ばれることが分かった。本研究での検証結果は、市場での評判のメカニズムの分析においても興味深い結果であると思われる。 社債市場以外にも、日本の新規株式公開(IPO)に関して2つの研究を行った。まず、1997年から2009年までの1561社に及ぶIPOのデータベースを完成させた。日本のIPOは、制度上のユニークさから、我々はIPO研究の一層の発展に寄与するため、英語版でこれを公表した。現在、IPO研究の第一人者であるJay Ritter教授のWeb Siteにリンクされ、世界中で活用されている。次に、IPOの価格決定方式として、わが国では1997年にブックビルディング(BB)方式が導入されて以来、入札方式とBB方式は選択可能となったが、入札方式は実質的に一件も採用されていない。BB方式の方が新規公開企業にとっての機会損失が大きいことを考えると、これは大きな謎である。これに対して、従来とはまったく異なる視点から、総合証券会社による利益相反の可能性を指摘し、仮説を提示した。
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