2011 Fiscal Year Annual Research Report
非対称分布による倒産モデル構築と潜在変量の構造分析
Project/Area Number |
21330087
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
大野 忠士 筑波大学, ビジネスサイエンス科, 教授 (10527930)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
椿 広計 筑波大学, ビジネスサイエンス科, 教授 (30155436)
|
Keywords | 非対称正規分布 / 信用リスク / Skew Normal / Hidden Truncation |
Research Abstract |
1.はじめに Azzalini(1985)によれば共に正規分布に従う2つの確率変数の一方が他方を切断することで歪んだ分布が形成されるとし;これを非対称正規分布(Skew-normal distribution)と呼んだ,本研究はこれを倒産企業分布に適用した. 2.非対称正規分布の適用と倒産分布の密度関数: Yを各企業の信用状態たる確率変数とし(位置,尺度パラメータはμ_1、σ_1)、Wを与信判断基準たる閾値とする(位置,尺度パラメータはμ_2、σ_2).Y>Wというイベント(倒産)が起こったときのYをZ(倒産企業の信用リスク値)と定義すると,Zの密度関数はこの4パラメータからなる非対称正規分布であらわすことができる. この結果,倒産実証データを使って目に見えない与信判断パラメータを推定することが可能になる。 3.実証データによる閾値パラメータの推定,倒産企業の分布形状(歪度)と閾値パラメータの関係 実証データ(米国企業データ)を用いて閾値パラメータ(2002年から2007年までの与信判断パラメータ)を推定したところ米国経済・金融環境の変化と一致した結果となった.実証データを用いて倒産企業の歪度と閾値パラメータの関係を検証したところ,歪度が小さい中小企業を含めた倒産先の場合,閾値の尺度が大きいと推定され,歪度が大きい大型倒産先のみの場合,閾値の尺度が小さいと推定された, 4.まとめ 非対称正規分布モデルでは閾値が確率変動すると考えるため財務内容が然程悪くなくとも倒産する場合や財務内容が悪くても倒産しない場合を説明することができる.実証データにより閾値パラメータを推定したところ金融環境の変化に合わせて閾値の位置パラメータが変動していく様子を示すことができた.更に,このモデルは倒産企業分布の歪度が閾値の尺度パラメータ(与信判断の振れ幅)で説明され得ることを示唆している.
|