Research Abstract |
平成21年度における研究実績(金庫株の消却を対象にしたガバナンス効果の測定,取締役会改革が企業行動や市場評価に与える影響,自己株取得の動機に関する研究,ガバナンス構造が資源蓄積行動や戦略の策定・遂行に与える影響),および平成22年度における研究実績(支配株主の存在が株式リターンに与える影響,支配株主が存在する下で,機関投資家が株式リターンに与える影響,自己株式取得に対して株式所有構造が与える影響)を踏まえて,平成23年度はそれらを発展的させた3つのテーマに取り組んだ。 第1のテーマは,日本型ブロックホールディングが与える影響に関する研究である。平成22年度には株式リターンへの影響を対象にしたが,平成23年度は企業の財務行動,とりわけ配当行動に与える影響に焦点を当てて検証を行った。エージェンシー・コストの視点からみて,配当行動と株式リターンとの関係に対して,大口株主が優位な影響を与えていることを明らかにした。この研究はワーキング・ペーパーとして完成し学術誌に投稿したが,残念ながら受理とはならず,現在修正中である。第2のテーマは,機関投資家あるいは外国人による所有に影響を与える要因に関する検証である。この研究により,外国人所有の変動の相当部分がマクロ変動要因によって説明できること,企業固有の要因として規模,収益性,配当,リスクが優位な影響を与えていることを明らかにした。この検証についても,ワーキング・ペーパーとして完成し,現在投稿中である。第3のテーマは,企業のガバナンス構造が資金調達に与える影響である。この研究は,平成23年度に新たに開始したものであり,現在は,リサーチ・デザインを終了し統計分析を行っている段階である。 平成23年度は,これらの新規研究だけでなく,既存研究が実を結んだ年度となった。企業のガバナンス構造が金庫株の消却に与える影響,また自己株式取得に与える影響に関する研究について,投稿していた論文が4本受理された。
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