2010 Fiscal Year Annual Research Report
高機能広汎性発達障害児者の間主観性の問題に関わる動的な対人認知過程の実験的検討
Project/Area Number |
21330208
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
安達 潤 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (70344538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 真善 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50344544)
萩原 拓 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00431388)
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Keywords | 高機能広汎性発達障害 / 間主観性の認知 / 対人交流の同調性 / 動画刺激 / 会話の同調性 |
Research Abstract |
今年度の研究成果は、アイトラッカーを組み込んだ閉会路TVコミュニケーションシステムの確立および間主観性を検討する実験パラダイムによるアイトラッカーを使わない実験の実施である。システムについては、超小型カメラをつり下げてアイトラッカーモニターの中央部に位置させることによって自然なeye to eyeの対人交流を実現することができた。このシステムで双方向の対人交流を行った結果、超小型カメラをあまり気にすることなく、関わり合えることが認められた。実験については、高機能広汎性発達障害者19名(HFPDD群)を対象に、対人交流場面における他者の動作に対する同調傾向(長岡、2006)について調べた。HFPDDは、対人相互交渉における表出行動のタイミングの悪さや、コミュニケーションの交互性維持困難が指摘されている(Tantam,1993、Garcia-Perez,2007)。実験事態は実験者と交互に一拍ずつ拍手をする課題で、ランダムに変化する実験者のテンポに合わせるよう教示された。交互の拍手間隔を自己相関分析して同調傾向を評価した。結果、HFPDD群は定型発達群に比べ、有意に相関係数が低く、同調傾向が低かった(p<.01).あわせて、音声のない二者の会話場面動画において実際に会話が成立しているか否かを判断する課題(会話同調判断課題)とメトロノーム音提示後に同じリズムを拍手再生するリズム再生課題を行った(48~240bpm)。交互拍手課題と会話同調判断課題の成績は、HFPDD群では正の相関(r=.572,p<.01)が得られ、同調傾向が高い者ほど他者の会話に対する同調傾向の弁別能力も高いことがわかった。一方、リズム課題ではいずれのテンポにおいても両群に差はなかった。今回の結果は、単純な対人的交互活動におけるリズム同調性が他者の会話同調性の認知と何らかの関連性を持っていることを示しており、HFPDDにおけるリズム認知の困難性と対人交流の困難性のつながり(安達・齊藤、2009)を示唆するものである。
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