2011 Fiscal Year Annual Research Report
高機能広汎性発達障害児者の間主観性の問題に関わる動的な対人認知過程の実験的検討
Project/Area Number |
21330208
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
安達 潤 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (70344538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 真善 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50344544)
萩原 拓 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (00431388)
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Keywords | 高機能広汎性発達障害 / 間主観性 / 自動模倣 / 対人交流の同調性 / 動画刺激 |
Research Abstract |
今年度の研究では、閉会路TVコミュニケーションシステムでeye to eye対人交流を実現する設定におけるデータの分析において画面注視とカメラ注視をAOI分析では弁別できないことが把握された。そのため両注視の弁別を左右各眼の注視座標データで試みた結果、画面注視時のX座標は左眼く右眼となるが、カメラ注視時には右眼く左眼となることが確認された。しかし安定的な凝視状態で確認されるこの特徴を自由視察で抽出することは難しく課題解決への今後の検討を残した。このため、今年度は間主観性の問題に関わる別のアイトラッカー実験を考案し、ASDの就学前幼児が手遊び模倣状況において「相手にうっかりつられる現象」を確認することでASD児の自動模倣機能を検討した。「トントントン、みみ」と言って耳を触る単純な手遊び動画を耳・鼻・口の3パターン提示し、全16試行中7試行をひっかけ試行として、この場合には「みみ」と言いつつ鼻を触る動画を提示した。課題は言葉で言った身体部位を触ることである。対象者は5~6歳の幼児で定型発達10名、ASD13名であった。結果、ひっかけ試行中の(1)つられた試行数、(2)正遂行試行数、(3)誤遂行試行数のすべて、および課題遂行時の視線行動について群間の有意差は認められなかった。以上、簡単な手遊び模倣ではASD児も定型発達児同様、相手につられることが認められ、原初的な無意図的な模倣機能(自動模倣機能)は障害されていないことが示された。これは、自閉性障害のミラーニューロン仮説に反する結果である。さらに今年度の研究では、昨年度、自己相関係数分析に基づいて報告した拍手交代課題の同調性の程度が、実際に我々が肉眼で観察した際の同調性判断と一致するのかどうかについて調べた(実験に未参加の定型発達者22名、生活年齢平均20.6歳、AQ値平均16.9点、評価法は4件法)。結果、自己相関分析の際と同様、HFPDD群においてのみ、印象評定による同調性の程度が、会話同調性判断課題の成績と高い相関(r=.896,p<.01)を示した。このことから、自己相関係数による分析の妥当性が確かめられた。
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Research Products
(1 results)