Research Abstract |
本科研費の初年度である21年度は,超平面配置に関するさまざまな視点を学ぶ機会を提供し,これらの視点を広く理解し,統合する立場に立つことを目指した.そのために,研究者同士の厚みのある交流を組織的・機動的に行った.特に,本研究分野において,連携研究者の吉永正彦,阿部拓郎(ともに京大理学部)など次世代を担う国内の若手が近年育ってきたので,彼らを始めとする若手が海外の研究者と交流する機会を用意し,また,この分野に興味を持つ才能ある若手を研究の最前線に誘うことを目指した.具体的には,北大で阿部拓郎たちとの6回におよぶ研究打ち合わせを行い,北大滞在中の海外研究者を含んだ交流をもった.代表者は,「超平面配置」を主題に開催された第2回日本数学会季期研究所MSJ Seasonal Institute(MSJ-SI)(札幌,2009年8月1日~13日)(以下,SI2009と略す)の組織委員長を務めた.SI2009それ自身の開催費用としては,日本数学会からの援助(2百万円)に加え,競争的公募資金や寄附金等を用いた.一方,本研究計画では,SI2009の機会をうまく利用して,これと機動的に連動して,国外から著名な研究者(M.Salvetti, D.Mond等)を招き,国内研究者(特に若手)との交流の機会を作った.海外研究者によってもたらされる興味ある研究内容を,直接的なコミュニケーションを通して深く理解することができたのは有益だった.また,11月には米国に出張して,健康上の理由からSI2009に不参加だった超平面配置理論の創始者であるP.Orlik,L.Solomon両氏をたずね,大局的見地から現在の研究の方向について議論できたことは,SI2009のフォローアップとして大きな意味を持った.21年度の具体的研究成果として最大のものは、対数微分形式全体に負を含むすべての整数でパラメトライズされたフィルター付けを与えた阿部-寺尾の結果であり、すでにMathematische Zeitschriftに掲載されている。
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