2009 Fiscal Year Annual Research Report
非定常、弱ギブス状態の統計的性質とその可逆拡張の散逸性の解析
Project/Area Number |
21340018
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
由利 美智子 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (70174836)
|
Keywords | Dissipative phenomena / Intermittency / Entropy production / Invertible extension / Weak Gibbs measure / Non-hyperbolicity / Equilibrium state / Sofic system |
Research Abstract |
当該研究目的「滑らかさが崩れる非可逆系を出発点として、平衡状態から'遠く離れた非平衡状態に関する統計的様相を的確に捉え、その可逆拡張に関する"散逸性"を解析する」に対しては、意味のある粗視化を可能とする可算生成分割を保持する非双曲型・非可逆離散写像を対象に、弱ギブス測度に絶対連続な不変確率測度存在のもとで、Sinai-Ruelle-Bowen測度とほぼ同等な統計的性質を持つ可逆拡張を構成した。具体的には、可算Sofic条件をみたすFinite Range Structure(FRS)を仮定する事により、Pesin-Sinaiらにより定式化された弱い双曲性しか持たないpartially hyperbolic systemに適合した物理的測度であるhyperbolic u-Gibbs measureに極めて近い、弱Gibbs性を持つ可逆拡張が得られた事になる。既に、非双曲型・非可逆離散写像が可算Markov生成分割を保持する場合は、その可逆拡張の過去への分割を意味する不安定な葉層構造に関するRohlin分解が、過去が指定されている各葉層上の基本測度である弱Gibbs測度に絶対連続である事が証明されていたが、Markov条件が崩れていても、Finite Range Structure(FRS)を保持すれば同様の性質が保障される事を示した。更に、滑らかさ、双曲性が期待できない複雑現象の散逸性を捉える為に、不変・無限測度から派生する時系列として得られる非定常過程に注目し、エントロピー生成が消滅しながらも、Gibbsエントロピーが発散する為の十分条件を明らかにし、全く新しいタイプの散逸現象を捉える事が可能となった。又、非平衡状態のカオス、間欠現象(Intermittency)、神経回路の統計的解析に優れた業績を持つ研究者らを招聘し、研究集会「Dynamics of Complex Systems 2009-複雑系解析における未解決問題への新しい挑戦-」(8月31日~9月2日)を北大にて開催する事により、当該研究目的達成の為に有効な情報を交換する事ができた。
|