2010 Fiscal Year Annual Research Report
非定常、弱ギブス状態の統計的性質とその可逆拡張の散逸性の解析
Project/Area Number |
21340018
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
由利 美智子 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70174836)
|
Keywords | Dissipative phenomena / Intermittency / Entropy production / Invertible extension / Weak Gibbs measure / Non-hyperbolicity / Equilibrium state / Sofic system |
Research Abstract |
当該研究目的「滑らかさ、双曲性が期待できない複雑現象の散逸性を捉える為に、非双曲型・非可逆変換に対する(両側)非特異測度に絶対連続な不変測度の可逆拡張を構成し、エントロピー生成の消滅とGibbsエントロピーの発散の関連性を明らかにする」に対し、非双曲型・非可逆変換が生成分割を保持する場合に制限し、物理的非特異測度の候補として、弱ギブス測度を選択する事により以下の結果を得た。 (両側)非特異弱ギブス測度の可逆拡張を、無限の過去への分割に関する商空間上に自然に定義される非可逆変換を介在して構成する。この商変換は過去への時間発展を記述する変換と同一視される。実際、構成した可逆拡張は次の性質を持つ。可逆拡張の空間は(両側)非特異弱ギブス測度とその双対測度の直積に関し正の測度を持ち、可逆拡張自身もこの直積測度に関し(両側)非特異性を持つ。注目すべき点は、測度論的な可逆拡張の空間を、無限の過去・無限の未来それぞれを記述する空間に分割し、無限の過去を記述する逆向きの時間発展を与える系として記号力学系を採用する点である。このとき、非可逆変換に関する生成分割のSofic性が重要な役割を果たす一方、Markov性までは要求しない。更に、非特異弱ギブス測度に同値な不変測度に対する可逆拡張の空間も、同様に直積測度に関し正の測度を持ち、可逆拡張自身弱Gibbs性を保つ事を示し、エントロピー生成の消滅を双対非可逆変換に関する弱ギブス平衡状態と関連付けた。Ruelleによる非平衡状態の統計力学を念頭においた"散逸性"の定式化は、滑らかな測度に関する"エントロピー生成"の漸近的時間平均が消滅しないという性質として捉え、滑らかな双曲型力学系の範疇で自然な基本測度として現るSRB測度unti-SRB測度の不整合として特徴付けているが、双曲性の欠如はその描像を崩す。以上の理由により、基本測度として弱ギブス測度を選択する事は、生物・経済モデル等の非可逆系に内在する双曲性が欠如した複雑系を対象とした時求められる、平衡状態から"遠く離れた"非平衡状態に関する散逸性の定式化の新しい試みを与えているといえよう。
|