2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
重川 一郎 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00127234)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 隆 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (90234509)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 確率解析 / マルコフ過程 / 半群 / エルゴード性 / スペクトル / 対数 Sobolev 不等式 |
Research Abstract |
マルコフ過程から定まる半群の時間無限大での漸近挙動について、おもに楠岡誠一郎氏と共同研究を行い、多くの結果を得た。半群の挙動については L p 空間で p に応じてどのような変化があるかを調べた。そのためには、半群の超縮小性、あるいは超有界性が重要な働きをするので、それらをスペクトルの跳びとの関連で調べた。そして、超有界性がある場合は半群は平均に指数的に収束し、しかもその収束の速さは p に依存しないことを示した。さらに指数の正値性が超縮小性と同値であることも示した。さらに生成作用素のスペクトルについても調べ、生成作用素が正規である場合には、スペクトル自体が p に依らないことも示した。 一方で、半群の収束の速さ、あるいはスペクトル自体が p に依存する場合の具体例を構成した。これは1次元の拡散過程で、固有関数は常微分方程式の解として実現されることを用いて、生成作用素のスペクトルを完全に決定した。これにより、半群の収束性に関しても p に依存することも明示的に分かり、 L 2 の場合が収束の速さは最も早いことも分かった。 その他、1次元拡散過程の固有値、固有関数に関する性質を整理する作業を進めている。1次元の場合はその特殊性から超対称性を用いて、二つの異なる作用素のスペクトル構造が同じであることが示せる。このことから、固有関数を微分すると再び固有関数が得られることを一般的な枠組みで成立することを証明することが出来た。このことを基本にいろいろな固有関数の間の関係を統一的な視点で分類できるのではないかと思われる。今後これらの結果を深化させていく端緒が出来たと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マルコフ過程から定まる半群の時間無限大での挙動は、当初より研究主題として取り組んでいたものである。超縮小性に関わる性質についての研究の整理は進んでいたが、完全に必要十分の形でまとめあげることが出来た。さらに収束の速さが L p の指数 p に依存する具体例をスペクトルを完全に計算する形で解明することが出来た。この点に関しては当初の計画以上の成果が得られた。さらに対数 Sobolev 不等式を介した、L log L 型の Orlicz 空間での収束に関しての解明がまだ十分になされていない。将来的な課題として残っている。
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Strategy for Future Research Activity |
半群の収束に関して L p の枠組みでは整理が進んだ。さらに L log L 型の空間でも、対数 Sobolev 不等式との関連で、収束の速さの特徴付けが可能ではないかと考えられる。また、1次元の拡散過程については、生成作用素のスペクトルに関して、固有関数の微分が再び固有関数になることが一般的に成り立つことが示せたので、具体的な例で固有関数の微分を計算していく。特に直交多項式や、超幾何関数等で具体的な計算が遂行できる例が多く存在するので、それらを組織的に計算していく。さらに確率論的な観点から境界条件がどのように固有値に関係していくか、また、境界条件に応じて、固有関数のいくつかの系列に分かれることが予想されるので、それらに関して具体例を通して統一的な理解を確立したいと考えている。さらに、数理ファイナンスへの応用をめざし、金利モデルの CIR 過程について、特殊関数を用いて、具体的に解が求まるような場合を検証したいと考えている。
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Research Products
(5 results)