2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340034
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
時弘 哲治 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (10163966)
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Keywords | 超離散系 / 可積分系 / セルオートマトン / 有限体 / トロピカル / ソリトン |
Research Abstract |
(1)p-超離散化と呼ばれる正と負の値をとる系に対しても有効な超離散化の手法の応用として,q離散AiおよびBi関数から,超離散化によって超離散AiおよびBi関数を導出した.この導出には,差分方程式におけるEuler変換のq-類似を用いて得られる,q離散Ai関数に対する非自明な恒等式を用いた.この導出の過程で副産物として,制限付の分割数に関する無限個の非自明な恒等式を得た.この恒等式の組み合わせ論的な意味はよくわからず,今後の課題である. また,超離散パンルベII方程式のあるクラスの特殊関数解を,対応するq離散パンルベII方程式の行列式を用いた特殊関数解に対してp-超離散化を行うことにより構成した. (2)有限体上の離散可積分方程式を研究した.非線形発展方程式を有限体上で研究する際に,これまで大きな障害となってきたのは,従属変数の逆数を取る操作が入るため,一般に0で割ることにより時間発展が定義できないことであった.これに対して,離散パンルベ方程式では,坂井理論に基づいて有限体上で射影空間をblow-upした初期値空間の構成を行い,方程式を射影空間の自己同型写像として定義することによって解決できた.また,ソリトン方程式では,有限体そのものではなく有限体上の有理関数を扱うことで,時間発展の不定性を解消することができた.この手法と,離散方程式の可積分性の判定テストである特異値閉じ込めテストとの関係についても明らかにした.また,Yang-Baxter写像に付随する一般化されたKdV方程式を扱い,有限体上でのソリトン解の具体形とその周期を求めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究実施計画に述べた3点:負のソリトンの問題,箱玉系の相関関数,有限体上の可積分系の構成について,前者2点は早い段階で解決し論文が発表され,第3点も予備的な考察は終わり,この春の数学会でもある程度の報告ができた.また,当初予定になかったp-超離散化について,ある程度の貢献ができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
有限体上の可積分系に関して,有限体上の有理関数の空間での写像と捉えることは,ソリトン解など具体的な表示式を持つものには有効であるが,初期値問題を数値的に考察する場合には次数の急激な増大によって,大きな系での数値的な考察は事実上不可能である.そのため,数値計算に適するよう,p進数体での考察を行う.特に,1)可積分系では保存量の存在によって,従属変数のp進付値がほとんど変わらない(予想)ことを示し,2)代数的に閉じたp進数体(拡大体)では,代数幾何的な初期値問題の解法が適用できると考えられるため,まずこの上で初期値問題を解き,その結果を有限体上に射影することで有限体における初期値問題を解く,ことを計画している.
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Research Products
(4 results)