2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340050
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山崎 敏光 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (80011500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤石 義紀 日本大学, 理工学部, 客員教授 (50001839)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | K中間子 / K中間子原子核 / 高密度原子核 / 陽子陽子反応 / K中間子凝縮 |
Research Abstract |
* 多重K中間子核の構造 昨年に引き続き、Faddeev-Yakubovsky法により4体系までのK核の構造の計算を行った。K-p, K-K-p, K-pp, K-ppn, K-K-ppのすべてに対し、束縛エネルギーおよび核半径、核子間距離を基本相互作用強度をパラメターとして計算した。2004年のわれわれの初めての予言をよく再現した。さらに今回は、K-p相互作用の強度を変化させることにより、K-pp, K-K-pp核の束縛エネルギーがどう変化するかも計算された。すでにDISTO実験において観測されたK-pp核の束縛状態は当初の予言より深く、KN相互作用が20%くらい増大していることを示唆していた。この現象の系統性を説明する一つの方法として、カイラル対称性の破れの回復を考慮した。Brown-Kubodera-Rhoの模型に従い、K核の凝縮に伴い核子によって排除されるQCD真空が減少し、カイラル対称性の破れに伴うクオーク凝縮は減少し、その分、KbarN相互作用は約20%増大する。これは、最近、GSI研究所のFOPI実験で同定されたK-ppn核の束縛状態からの知見とも一致している。 * 多重K中間子核の生成反応 では、そのようなK-K-pp核はどのようにして生成可能であるか?われわれは昨年に引き続き、この生成反応をさらに深く研究し、その結果をPRC誌および国際会議において発表した。これは、近い将来、J-PARCにおいて実施可能なテーマであることが判明し、具体的実験方法を検討中である。 * pp反応におけるラムダ1405粒子の生成反応を解析し、その共鳴の位置と幅を決定する作業を行った。その結果、ラムダ1405粒子の質量は1405 MeV/c2であることが確認された。PRC誌にアクセプトされ、印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
4体のK核、即ち、K-p, K-K-p, K-pp, K-ppn, K-K-ppのすべてに対し、束縛エネルギーと核のサイズ、核子間距離の計算が完了した。これは最初に設定するKN相互作用を可変とするもので、これまで行われたことがない。その結果、多次元的オーバービューを可能とした。パイ中間子核子相互作用において実験的に証明されたカイラル対称性の破れの回復がKN系においてどう出現するかを検討した結果、K核の凝縮に伴い、相互作用が20%増強し、束縛エネルギーが倍加するという理論的結果が導かれた。この視点は当初予想していなかったものである。現在、この結果を報告する大きな論文を執筆中である。二重K核はさらに興味あるK核ストレンジレットの形成を確実にすると期待され、今後の実験・理論研究領域が広がった。
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Strategy for Future Research Activity |
二重K核の理論的予言は一段落しつつあるので、次はそれを見つける実験方法の開拓である。J-PARCにおける可能性を検討する。また、もっと重い多重K核を重イオン衝突反応において見出す処方箋も開拓する。K核は多体問題としてユニークな「遊び場」を提供しているので、さらに理論的研究も発展させる。また、相対論的補正はK核において必須であるので、その扱いかたを研究する。
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