2010 Fiscal Year Annual Research Report
連星中性子星およびブラックホール中性子星連星の合体による重力波に対する数値的研究
Project/Area Number |
21340051
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴田 大 京都大学, 基礎物理学研究所, 教授 (80252576)
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Keywords | 重力波 / ブラックホール / 中性子星 / 連星 / 数値相対論 / 一般相対論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、連星中性子星およびブラックホール・中性子星連星の合体過程および放射される重力波の波形を、中性子星の質量や状態方程式、ブラックホールの質量やスピンを幅広く変化させながら、これまでになく系統的にかつ定量的に正確に明らかにすることである。 H22年度は特に(1)等質量の連星中性子星に対する長時間シミュレーション、および(2)スピンが存在するブラックホール・中性子星連星に対するシミュレーションに焦点を絞って研究を進めた。いずれの場合も、ピースワイズポリトロープを用いて中性子星の現実的な状態方程式を近似的にモデル化した。この場合、現実的状態方程式を2~4個の少数のパラメータで近似的に表現することが出来る。H22年度は連星中性子星に対して4パラメータのモデルを、ブラックホール・中性子星連星に対して2パラメータのモデルを用いた。シミュレーションは合計で100以上実行した。 連星中性子星に関しては、合計質量が太陽の2.7-3.0倍にある連星を採用し、合計6個の状態方程式を用いてシミュレーションを実行した。最近の重い中性子星の観測結果を受け、硬い状態方程式を採用した。その結果、合計質量が太陽の2.7倍程度の典型的な連星中性子星は、合体後にブラックホールへと重力崩壊することなく、大質量中性子星を形成することが分かった。しかし、その後角運動量散逸・輸送過程でブラックホールへと最終的には重力崩壊する。超寿命の大質量中性子星が誕生する場合、特徴的周波数が2.5-3kHzの大振幅の準周期的重力波が放射され、これは次世代重力波検出器で検出可能性があることを示した。また最終的に誕生するブラックホールの周りに0.1太陽質量を超えるような降着円盤が誕生しうることも示した。これらの結果に関しては論文を近々投稿予定である。 ブラックホール・中性子星連星に関しては、質量、ブラックホールスピン、状態方程式などを幅広く変えながら、合計100近いシミュレーションを実行した。最も重要な発見はぐスピンが大きい場合、幅広い質量比に対して中性子星の潮汐破壊が起こることを示したことである。潮汐破壊時の重力波周波数から、中性子星の状態方程式に制限が課せること、潮汐破壊の結果太陽質量の0.1倍を遥かに超える降着円盤が誕生することなども新しい知見である。これらに関しても論文を近々投稿予定である。なお重力波の波形の計算結果をWebで公開するための準備も進めた。
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Research Products
(4 results)