2009 Fiscal Year Annual Research Report
量子ホール系における核スピン制御と電子スピン物性探求
Project/Area Number |
21340077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
町田 友樹 The University of Tokyo, 生産技術研究所, 准教授 (00376633)
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Keywords | 物性実験 / 半導体物性 / 低温物性 / 量子閉じ込め |
Research Abstract |
本研究では申請者の開発した量子ホール効果ブレークダウンを利用した核スピン制御手法を利用して、(i)量子状態コヒーレント時間の延長、(ii)核スピンをプローブとした量子ホール系における局所的電子スピン偏極率の決定を目的としている。今年度は量子ホール効果ブレークダウンによる動的核スピン偏極のメカニズムに関する理解を深めるため、核スピンのポンプ&プローブ実験を行い、核スピンのランダウ準位充填率依存性を明らかにした。これまで核スピン偏極が生じないと一般的に理解されていたランダウ準位充填率ν=2の量子ホール状態においても量子ホール効果ブレークダウンによって核スピンが動的に偏極することを示した。この実験は量子ホール効果ブレークダウンによる動的核スピン偏極のメカニズム解明の糸口を与える点で重要な結果である。またこの手法によりCdTe核スピンを制御するための準備としても重要である。また、歪みを印加することにより、核磁気共鳴スペクトルの電気四重極相互作用分離を観測することに成功し、核スピンコヒーレント時間が延長することを実験的に示した。コヒーレント時間の延長は量子情報技術への応用に向けて重要である他、核磁気共鳴線幅の減少によりナイトシフト測定による局所電子スピン偏極率決定の精度を向上することが出来る点からも重要な結果である。またサイドゲートを利用して量子ホール端状態の位置を制御することにより、核スピン緩和時間およびナイトシフトの空間分布測定を行った。核スピン緩和時間に2種類の緩和時間が存在することを見出し、早い緩和過程においてスカーミオンの形成によると思われる核スピン緩和促進が観測された。これまで実験的に観測例のない量子ホール端状態スカーミオンの検出を示す初期的な実験結果であり、今後の展開に向けた重要な結果である。
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