2010 Fiscal Year Annual Research Report
量子ホール系における核スピン制御と電子スピン物性探求
Project/Area Number |
21340077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
町田 友樹 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (00376633)
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Keywords | 物性実験 / 半導体物性 / 低温物性 / 量子閉じ込め |
Research Abstract |
本研究では量子ホール効果ブレークダウンを利用した核スピン制御手法を利用して、(i)量子状態コヒーレント時間の延長、(ii)核スピンをプローブとした量子ホール系における局所的電子スピン偏極率の決定を目的としている。また、核スピン偏極のメカニズム自体の解明も重要な目的としている。今年度は量子ホール効果ブレークダウンによる動的核スピン偏極のメカニズムに関する理解を深めるため、多数の電圧プローブを有するホールバー型素子を用いて、量子ホール効果ブレークダウンによる動的核スピン偏極の空間分布を実験的に明らかにした。核スピン偏極の検出には通常縦電圧測定を利用してきたが、ホール抵抗値の量子化値からのズレを利用して検出した。これにより、伝導チャネルと電圧プローブの交差する位置における核スピン偏極の情報が得られる。ソース・ドレイン電極間に臨界電流値以上の電流を印加して量子ホール効果ブレークダウン状態にすると核スピン偏極の形成によってホール抵抗値の変化が生じる。ホール抵抗値の量子化値からのズレは電流注入端子から離れた電圧プローブにおいて大きくなり、ブートストラップ式電子加熱により量子ホール効果ブレークダウンが空間的に発展するに従い、動的核スピン偏極も形成されている様子を反映している。電流注入方向を反転されると傾向は反転する。高周波磁場印加による抵抗検出型核磁気共鳴の振幅によっても空間的に核スピン偏極が発展する様子が得られた。量子ホール効果ブレークダウンによる核スピン偏極メカニズムを解明する上で重要な実験的事実が得られた。
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