2011 Fiscal Year Annual Research Report
波形整形パルスで励起した分子異性化ダイナミクスの実時間量子波束制御
Project/Area Number |
21340079
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
三沢 和彦 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 教授 (80251396)
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Keywords | 波形整形パルス / 異性化ダイナミクス / 量子波束制御 / シアニン系色素 / 振動選択励起 |
Research Abstract |
本研究では、有機分子の光異性化などに代表される光誘起構造変化のコヒーレント制御を目標に、昨年度までのシアニン系色素の研究と同様に、アゾベンゼン系色素分子を対象として、目的の構造変化を誘起するためのパルスの条件を探索した° 今年度は、アゾベンゼンと類似の構造を持ち、チタンサファイアレーザーの第2高調波400nmの光を吸収帯に持つメチルイエローの光構造変化の同定を行った。メチルイエローの構造変化には、以下の2通りが考えられる。(1)アゾベンゼン構造がトランス型からシス型に異性化する。(2)周囲のpHが下がると水素イオンを取り込み構造変化して色が変化する。まずは、光励起によって、この2種類のどちらの構造変化が誘起されているかを区別する実験を行った。 0.5mMのメチルイエロー/エタノール溶液に波長405nmの励起光を照射すると、380~450nMの帯域では吸光度が減少し、480~550nMの帯域では吸光度が増大した。この吸収スペクトル変化には、等吸収点が存在する。さらに、試料のpHを変えて吸収スペクトルの変化を測定したところ、光励起の場合とpH調整の場合とでは、吸収変化の差スペクトル形状が異なることが確かめられ、光励起による変化は水素イオンを取り込んだ変化ではないと結論できる。 一方、光励起後に吸収スペクトルが変化したメチルイエロー溶液の温度を上げると、光励起前のスペクトルに戻ることも確かめられた。これは、熱励起によって、シス・トランス間のポテンシャル障壁を超えた可能性がある。以上の実験から、波長405nmのレーザー照射によってメチルイエローの光異性化を誘発することに成功したと結論した。
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