2010 Fiscal Year Annual Research Report
超高速レーザー分光によるカーボンナノチューブの新奇光学応答と非線形性巨大化の研究
Project/Area Number |
21340081
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 新男 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50159068)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 剛史 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20509070)
|
Keywords | ナノチューブ / フェムト秒分光 / 光物性 / 非線形光学 / 一次元励起子 |
Research Abstract |
1. 金属ナノチューブの励起子発光とそのダイナミクス 理論計算と共鳴レーリー散乱の実験などから、金属ナノチューブにおいて励起子状態が存在することが示唆されているが、その確証を与える励起子発光の観測はこれまで行われていない。フェムト秒アップコンバージョン法を用いて金属ナノチューブの極微弱な発光を観測し、そのダイナミクスを明らかにした。金属ナノチューブのバンド間遷移エネルギー領域における発光寿命は約40fsであった。一方、ポンプ-プローブ分光で観測された過渡的な吸収変化は約500fsで回復することがわかった。過渡吸収のダイナミクスは光励起されたキャリヤによってホットになった電子系の冷却過程に対応することがこれまでに知られている。発光寿命はキャリヤの緩和時間に比べて約1桁長いことから、40fsの寿命を持つ発光は、自由な電子と正孔の再結合ではなく、電子と正孔の束縛状態を形成する励起子の再結合に起因することが明らかになった。本研究により、金属電子中に形成された励起子の発光を初めて観測することに成功した。 2. 金属フラーレンピーポッドの作製と構造評価 Gdを内包したC_<82>分子(Gd@C_<82>)をカーボンナノチューブに挿入したGd@C_<82>ピーポッドを作製し、透過電子顕微鏡によりその構造評価を行った。Gd@C_<82>分子がナノチューブ中に一次元的に配列していることが確認された。Gd@C_<82>ピーポッドの吸収スペクトルは同一条件の処理を行った単層カーボンナノチューブに比べて約40meVのレッドシフトを示し、差分吸収スペクトルにはGd@C_<82>分子の吸収成分が観測された。内包されたGd原子のためにフラーレン分子の対称性が変化するので、光学遷移選択則の変化や振動子強度の増強効果が期待される。
|
Research Products
(17 results)