2011 Fiscal Year Annual Research Report
ブラッグ反射条件近傍に置いた結晶によるX線波束の異常シフトの観察とX線導波管応用
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21340086
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
香村 芳樹 独立行政法人理化学研究所, 放射光イメージング利用システム開発ユニット, ユニットリーダー (30270599)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 義人 独立行政法人理化学研究所, 物質系放射光利用システム開発ユニット, ユニットリーダー (80260222)
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Keywords | 量子ドットの特性評価 / 歪み結晶 / エピタキシャル結晶界面 / 新しい動的X線回折理論検証 / サブミクロンスケールの結晶歪み / 高感度歪み計測 / 結晶歪みの制御 / Berry位相 |
Research Abstract |
完全結晶を用いたBragg反射では、分散面にギャップが生じる。実空間で、結晶に歪みが存在し、逆空間で、結晶への入射角が、Bragg条件からDarwin幅程度外れているという二条件が満たされると、X線波束が結晶中を伝播する際、通常の群速度から大きく外れ、Berry位相の補正が必要となる。X線波束は結晶の法線ベクトル方向に流され、巨視的な異常シフト現象が生じるが、この変位量は、歪み量に比例し、分散面のギャップに反比例する[1]。実験による検証は、SPring-8、アンジュレータービームラインにて、15keVのX線を用いて行われた。昨年、100μmtのシリコン歪み結晶中でX線が約5mm伝播し、結晶の縁に到達した成果について報告した[2]。 我々は、この現象を利用する事によって、ヘテロエピタキシャル結晶の界面での歪みを解明できる事を示した。シリコン基板の上にゲルマニウムを4原子層程積み、島状の量子ドットを生じさせた試料を入手し、実験を行った。界面に格子定数のミスマッチがあるため、シリコン結晶表面近傍で、量子ドットの形状に応じた二次元的なうねりが生じている。実験では、ブラッグ角近傍の狭い角度範囲で、入射した角度よりも浅なる方向、深くなる方向、二方向に、X線異常シフト現象が同時に観測された。単一ピークをなす入射X線が、三つのピークに分離する新しいX線光学現象が観測された。実験結果を解析した結果、量子ドットの1ミクロン程度の間隔ごとに、4秒角程度の角度分布を有する界面付近結晶面のうねりを検出出来ている事が分かった。今後、量子ドットの密度を上げ、同様の測定を行えば、界面において1ミクロン以下のスケールでの結晶歪みが測定できるであろう。非破壊でこの様な知見を得られれば、他の手法では達成できなかった、次世代半導体デバイス開発のブレークスルーが期待できるであろう。 [1]K.Sawada et al.,Phys.Rev.Lett.,96,154802(2006) [2]Y.Kohmura,et al.,Phys.Rev.Lett.Viewpoint,104,244801(2010),B.W.Adams,Physics 3,50(2010)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「研究の目的」で二番目に示した歪み結晶における歪み分布計測については、申請書通り、シリコン/ゲルマニウムの混晶を用いて、定量的に計測可能である事を示した。従来の計測法では達成の難しい、サブミクロンの空間スケールでの計測可能性が示された。 一番目に示したX線干渉計測法によるBerry位相の直接計測は、実験が実施され、位相項が観察され、現在、理論との照合を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、太陽電池など半導体実デバイスにおける局所歪みの観察を行い、実デバイス性能に与える影響を調べる。 第二に、結晶面に電磁波を加える事により、歪みの高速制御を実現し、さらに時分割歪み計測技術を開発し、量子ドットへの光照射とエキシトン生成消滅のドットサイズ効果などを通じたメカニズム解明などを開始する。第三に、X線横すべり現象を引き起こす原因であるベリー位相の可視化実験のために、理論との照合が行いやすい基礎実験を考案、実施する。
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