2009 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能角度分解光電子分光による銅酸化物高温超伝導体のバルク電子構造の研究
Project/Area Number |
21340088
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 宇史 Tohoku University, 高等教育開発推進センター, 助教 (10361065)
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Keywords | 光電子分光 / 超伝導 / 銅酸化物 |
Research Abstract |
本年度は、高分解能光電子分光装置を低エネルギー超高分解能仕様に改良するために、装置各部の具体的な設計を行い、改良した装置を用いて、銅酸化物高温超伝導体の擬ギャップについての研究を行った。装置全体の設計と製作においては、2次元ブリルアンゾーン全体に亘る測定を実現するために、低温角度可変型マニピュレーターを開発し、それにステッピングモーターを組み合わせてコンピュータで制御する事により、試料先端基板部分において高精度のアジマス回転とチルト回転を実現した。また、エネルギー分解能向上のために、低速電子に対応した電子レンズ電圧設定を新たに構築し、低エネルギーにおいても高精度のARPES測定が行えるようにした。また、低エネルギー光による高効率の測定を実現するために、励起光源系の差動真空排気系の強化や光路の調整を行った。これらの改良を施した光電子分光装置を用いて、単層系銅酸化物高温超伝導体Bi_2Sr_2CuO_6(Bi2201)の低エネルギー高分解能ARPES測定を行った結果、最適ドープの試料において、ブリルアンゾーンのアンチノード領域で超伝導ギャップとそれに付随した明確な準粒子ピークを観測する事に成功した。超伝導転移温度以上における精密な測定の結果、アンチノード領域において擬ギャップを観測し、この擬ギャップが超伝導ギャップと同じエネルギースケールをもつことを明らかにした。また、フェルミ面上の複数の波数において温度変化測定を行った結果、擬ギャップの閉じる温度と超伝導ギャップのサイズが比例関係にあることを見出した。これらの実験事実から、観測された擬ギャップが超伝導の前駆現象であると結論した。また、銅酸化物の参照物質であるコバルト・タングステン酸化物のARPES測定を行った、その結果、Na_xCoO_2においては高ドープ領域でフェルミ面のトポロジーが劇的に変化する事を見出した。
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Research Products
(10 results)