2009 Fiscal Year Annual Research Report
圧力誘起超伝導体の高圧下電子状態の解明と新奇超伝導の探索
Project/Area Number |
21340092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上床 美也 The University of Tokyo, 物性研究所, 准教授 (40213524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 和幸 東京大学, 物性研究所, 助教 (10451890)
宗像 孝司 東京大学, 物性研究所, 技術職員 (00363408)
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Keywords | 圧力装置 / 静水圧 / Ce2Ni5C3 / SrFe2As2 / 超伝導 / 強相関 |
Research Abstract |
本年度はPalm Cubic Anvil圧力発生装置(PCAC)を用いた諸物性測定方法の開発を念頭に研究を進めた。測定試料としては、強磁性物質Ce_2Ni_5C_3、鉄系超伝導物質SrFe_2As_2及びBaFe_2As_2を用いて研究した。 強磁性物質Ce_2Ni_5C_3について、PCACを用いた電気抵抗及びAC帯磁率の圧力依存性の測定を0.6Kおよび6GPaまでの圧力範囲で行った。電気抵抗測定では、高圧下では、磁気転移を示すピークはブロードになり、明確にその転移温度を決定することは出来なかった。AC帯磁率を測定することにより、より明確に転移温度を決定できた。強磁性転移温度は、約3.7GPa程度で消失するが、3GPa以上の圧力で新たな相転移(3GPaで1.5K)が出現することを明らかにした。この新たな相転移は、反強磁性秩序に起因すると考えられる。この相転移は5.2GPaでは、2.1K程度まで上昇する。今後、この反強磁性秩序が消失する、より高圧下までの測定を行い、この物質の圧力相図を明らかにする予定である。 鉄系超伝導物質SrFe_2As_2、BaFe_2As_2及びEuFe_2As_2については、電気抵抗及びAC帯磁率を測定した。その結果、SrFe_2As_2における圧力誘起超伝導は5GPa以上の高圧下でなければ出現せず、バルク超伝導の出現圧力範囲は2GPa程度ときわめて狭いことを明らかにした。BaFe_2As_2においては、8GPaまで超伝導は出現しない事を指摘した。以上の結果は、この物質が圧力の質に非常に敏感であることを示しており、Cubic Anvil圧力装置を用いた研究により始めて明らかになったことである。SrFe_2As_2については中性子回折実験も行い、圧力誘起超伝導状態での磁気秩序の有無を調べた。6GPa程度の圧力における磁気散乱ピークの探索を4Kで行ったが、長距離秩序を示すピークを見つけることは出来なかった。従って、超伝導が出現した状態では通常の反強磁性秩序は存在しておらず、磁気秩序と超伝導は共存していないと考えられる。
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