2010 Fiscal Year Annual Research Report
圧力誘起超伝導体の高圧力下電子状態の解明と新奇超伝導の探索
Project/Area Number |
21340092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上床 美也 東京大学, 物性研究所, 准教授 (40213524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松林 和幸 東京大学, 物性研究所, 助教 (10451890)
宗像 孝司 東京大学, 物性研究所, 技術職員 (00363408)
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Keywords | 高圧力 / 相転移 / キュービックアンビル |
Research Abstract |
本年度は、初年度に引き続きPalm Cubic Anvil圧力発生装置(PCAC)を用いた諸物性測定方法の開発および、諸物質の圧力誘起超伝導を示す物質の探索を中心に研究を進めた。測定試料としては、重い電子系物質:YbCo_2Zn_<20>、CeRu_2Al_<10>、鉄系超伝導物質:LiFeAs、NaFeAs、さらに、擬1次元有機導体(TMTTF)_2TaF_6の高圧下での物性変化を測定し、その圧力相図を明らかにした。PCACを用いた電気抵抗、AC帯磁率およびAC比熱測定は1K以下および8GPa程度までの圧力範囲で測定可能となった。上記物質の中で、圧力誘起超伝導物質としては、(TMTTF)_2TaF_6が約6GPa程度で超伝導を低温で示すことを発見した。これは、一連の(TMTTF)_2XF_6(X=Ta、Sb、As、P・・・)の中でもっとも体積の大きな物質であり、これらの物質が圧力をパラメータとした一つ圧力相図で説明できることが再確認された。この圧力で誘起された超伝導は、X=Sbの物質で観測された超伝導とは、性質が異なっている可能性がある。今後、この圧力誘起超伝導の性質についてさらに明らかにする予定である。鉄系超伝導物質LiFeAs、NaFeAsについては、電気抵抗、AC帯磁率およびAC比熱を測定し、バルクな超伝導は高圧下のみで出現していることを明らかにした。これらの物質の示す物性は、SrFe_2As_2、BaFe_2As_2と同様に圧力の質に非常に敏感であり、CACを用いた研究の重要性が改めて認識された。また、PCACを用いた、中性子回折実験においては、これまでに圧力範囲7GPa程度、温度範囲4K程度までの低温での測定が可能となっている。アンビルをZrO_2からAl_2O_3単結晶に交換し、バックグランドを低くした実験を行った。その結果、3GPaまでの加圧に成功した。今後より高圧、低温での実験を行っていく予定である。
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