2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前野 悦輝 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授 (80181600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米澤 進吾 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教 (30523584)
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Keywords | フラストレート磁性 / 三角格子 / カイラリティ / ホール効果 / PdCrO2 |
Research Abstract |
H21年度には、本研究の中心対象物質であるPdCrO2の良質単結晶の育成方法を確立できたとともに、非従来型の異常ホール効果が生じていることを発見したどいう二つの大きな進捗があった。 1.二次元三角格子磁性体PdCrO2の単結晶育成方法の確立 PdCrO2はの二次元三角格子磁性体金属で、フラストレート磁性研究には標準的な物質と考えられるが、これまで単結晶の育成報告は一例もなかった。我々は準備期間から1年間以上の試行錯誤を経て、遂にフラックス法で単結晶が育成できることを見出した。更に育成条件を最適化して、単結晶育成方法の確立に成功した。この結果は磁化率や電気抵抗率などの本質的物性の解明に繋がっただけでなく、二次元三角格子磁性体で初めての非従来型異常ホール効果を発見する礎となった。 2.PdCrO2における非従来型異常ホール効果の発見 育成したPdCrO2の単結晶を用いて、磁場を[001]方向に印加し、電流を[110]方向に流した時のホール抵抗の磁場・温度依存性を調べた。その結果、局在Crスピンが120度構造に反強磁性秩序化するTN=37.5Kより低温のT*=20Kから、ホール抵抗の磁場依存性に従来のホール効果では説明できない非線形性を見出した。更に、T*では磁化率や比熱にも異常があることや、同構造で同価数・非磁性めPdCoO2のホール効果には40K以下の低温で非線形性が現れないことも明らかにした。これらの結果より、PdCrO2のT*以下のホール効果がスピン構造の変化と密接に関係する可能性を浮き彫りにした。これは近年フラストレート磁性金属のホール効果で注目されている「スピン配置の幾何学性」を起源とする新奇なホール効果と関係する可能性がある。しかし二次元三角格子系では、単純な磁気構造の場合はそのようなマクロなホール効果は出現しないことが理論的に指摘されてきた。従って、本研究により初めて実験的に非従来型の異常ホール効果を検証した点は重要である。二次元三角格子は幾何学的フラストレート格子の中でも最も基本的な構造を持つため、本成果は今後フラストレート磁性金属の磁性と導電性の相関を研究する上でも重要な情報を提供することが期待される。 3.この他、共同研究により、導電性のない三角格子フラストレート磁性体の研究も進めた。
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Research Products
(6 results)