2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前野 悦輝 京都大学, 理学研究科, 教授 (80181600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高津 浩 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (60585602)
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Keywords | フラストレート磁性 / 三角格子 / カイラリティ / ホール効果 / PdCrO_2 / PdCoO_2 |
Research Abstract |
(1)単結晶育成:昨年度論文で公表した育成方法に沿って、単結晶大型化を目指して条件のさらなる最適化を図った。育成時の石英管内圧を系統的に変化させ、低圧環境であるほど結晶が大型化する傾向を見出した。この最適化で1.0×1.0×0.2mm^3クラスの単結晶の安定育成ができ、低温物性測定のほか中性子散乱実験等への試料供給も可能にした。 (2)異常ホール効果:これまで得られた面間方向(c軸)磁場・面内方向(ab面,[110]方向)電流でのホール効果に加え、新たに面内磁場・面間電流でも調べた。その結果、従来配置では、磁気秩序化温度TN=37.5 Kより低温の20 K近傍から非従来型の非線形性が出現する(Phys.Rev.Lett.論文としてすでに公表)が、新配置では40 K近傍から出現している。これらから、単純なホール抵抗率の異方性だけでなく、磁場方向による磁気構造の変化も重要と分かる。実際、中性子散乱の結果から120度スピン構造の面はゼロ磁場中ではc軸方向を含む面上にあるため、面内磁場ではキャント成分が誘起され易いと示唆される。本年度の研究でのこの成果は重要で、今後の中性子散乱や他の実験から、キャントした成分からのスカラー・スピンカイラリティの寄与を明らかにする手掛かりに成り得る。 (3)角度依存性磁気振動(AMRO)の研究:層間抵抗(Rzz)の印加磁場の角度依存性を調べた結果、角度分解光電子分光や理論計算で示唆される六角形の筒状フェルミ面と符合する結果を得た。また、面内磁場ではRzzが10倍以上に増強されることを見出した。このRzzの増大は非磁性参照系のPdCoO_2でも観測されるため、電子系に本質的な重要な性質である。この新たな成果について論文投稿の準備中である。また英国のグループとの共同研究にて、PdCoO_2の低温電気抵抗率が極めて小さいことに関連する論文を投稿中である。
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Research Products
(3 results)