Research Abstract |
本研究の研究目的は,f電子系化合物における高圧、強磁場、極低温下の極限環境下でのドハースファンアルフェン(dHvA)効果や磁気抵抗の実験により、量子臨界領域で発現する超伝導とフェルミ面との相関を明らかにすることである。これらの系の超伝導は、磁気揺らぎあるいは価数揺らぎ,構造的な不安定性と深く関連していると考えられており、その電子状態の不安定性と超伝導をフェルミオロジーの観点から明らかにする。そのために,純良単結晶育成や,高圧力実験・強磁場・極低温実験をおこない,圧力誘起超伝導体を中心として,その量子臨界点近傍における電子状態の変化と,磁性,超伝導の関わりを明らかにしていく。 本年度は,空間反転対称性を持たない圧力誘起超伝導体CeIrSi_3の圧力下磁気抵抗測定および圧力下交流比熱測定により,加圧により2.1GPaで消失する反強磁性が,磁場の印可により復活するとともに,磁場下では反強磁性と超伝導が競合し,磁場誘起反強磁性が絶対零度に近づく量子臨界点近傍で超伝導上部臨界磁場が著しく増大することを明らかにした。さらに磁場中で回転できる小型圧力セルを用いたdHvA効果の実験により,常圧では観測されなかったフェルミ面の観測に成功した。また,超重い電子系物質YbCo_2Zn_<20>において,磁場を<111>方向に印可すると,磁場誘起四極子秩序と思われる新たな相が出現することを見いだした。さらに,他の系としてYbTX_5(T:Co,Rh,Ir;X:Si,Ga)の単結晶育成およびdHvA効果の実験をおこなった。この中で,YbCoGa_5のサイクロトロン有効質量が他の物質に比べ,3倍程度重く,量子臨界点に近いことを明らかにした。
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