2012 Fiscal Year Annual Research Report
フェルミ並びにボーズ粒子超流動体の新しい秩序相の探求
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21340103
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
町田 一成 岡山大学, 自然科学研究科, 名誉教授 (50025491)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超伝導 / 小角中性子散乱 / 磁化 / 渦格子 |
Research Abstract |
当該科研費研究課題に基づいて研究を遂行した。今年度においてはSr2RuO4の理論研究を実験グループとの密接な連携の中で実行した。 (1) 小角中性子実験(SANS)グループとの共同研究 この課題は数年前より行っていて、昨夏において論文を出版して成果を問う事ができた研究課題である。問題はこの超伝導体のab面に正確に磁場を印可して電子の軌道運動を抑制した状況での磁気構造の解明である。即ち、面平行磁場によって生成された渦格子構造を小角中性子実験によってプローブすることである。Eskildsen教授等の実験グループによって正確に角度のコントロールされたSANS実験に成功した。この結果、面内での渦格子の異方性が60に達することが明らかになった。これは上部臨界磁場の異方性が20であることと対比的である。この理由を一重項対関数を仮定し、またパウリ常磁性効果を考慮して理論的に解析を行った。理論の枠組みは微視的なEilenberger理論であり、これは定量性を有した信頼性の高い方法論である。その結果異方性60はこの系の固有の異方性であり、Hc2の異方性20はパウリ効果に起因する見かけのものであることを明らかにした。 (2) 面平行磁場による磁化の観測とその解析 磁場を面平行に正確に印可して磁化を測定することを理論サイドから提案し、その実験に物性研の榊原グループが成功した。またHc2での一次転移も観測された。磁化のHc2でのジャンプは低温で1G程度であり、その大部分が準粒子からの寄与であることを理論的に明らかにした。即ち、一重項対がパウリ効果によって一次転移を示したものと理解できることに成功した。対応する三重項対の計算ではこの実験を説明することは出来ない事も示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要にも記したように、Sr2RuO4についての大きな課題を今年度において果たすことができた。この系のクーパー対の偶奇性についての決定的な証拠を得る事ができたので、現在までの達成度は十分に高いものであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
この後においては、今年度の結果を踏まえてSr2RuO4の対関数の絞り込みの作業を継続して行う予定である。計画中の課題としては (1) SANS実験の継続:今までの横磁場測定に加えて、今年度においては縦磁場の測定を試みる。磁化測定からHc2=1.5Tにおいて内部磁場の変動幅は1G程度と実測された。この値はSANS実験精度の内に入るので、縦磁場の観測の可能性は十分にあると見積もることができる。 (2) 磁化測定の継続:面内から小角領域での磁化、トルク測定を継続して行う。これによってHc2相図中に内部構造の有無を調べることが可能となる。内部構造が見出されれば、FFLO状態の可能性を含めてこの系特有の新規超伝導状態の発見に努める積りである。
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Research Products
(1 results)