2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340106
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
寺崎 一郎 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30227508)
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Keywords | 強相関電子 / 電荷秩序 / 巨大応答 / グラス相 |
Research Abstract |
本研究の目的は,(1)電荷秩序相のナノドメインがガラス状に凍結する系を急冷法や化学修飾によって作りだし,(2)その空間構造をX線回折および顕微分光法によって評価し,(3)誘電率および交流伝導度の温度,周波数,バイアス依存性を精密に測定することによって電荷ダイナミクスを理解し,(4)構造と機能の相関を明らかにするとともに,それを利用した新規なデバイス設計の提言を行うことである。以下に主な成果を列挙する。 (a) 有機伝導体κ-(BEDT-TTF)_2Cu_2(CN)_3の誘電応答を調べ、電荷グラス状態がダイマーなす2分子上で起きる結果、ダイポールグラスというべき電子状態が実現していることを見出した。その誘電異常はリラクサー誘電体とよく似ており、乱れのない結晶で観測されたのはきわめて珍しい。この測定結果と解析について論文にまとめた。 (b) 有機伝導体θ-(BEDT-TTF)_2RbZn(SCN)_4の急冷相の電荷クラスターグラス状態を電流通電下でのX線回折結果を解析し、電流によって電荷秩序ガラスが抑制されること、そしてそれが単純な事故発熱の効果ではありえないことを示し、論文にまとめた。 (c) 無機物質として、Ca_2RuO_4の電場応答を調べた。そして、この系が電場に対して非線形に応答することを見出した。非線形伝導は金属絶縁体転移を経由せずに現れ、その特徴は電荷秩序を示す有機導体に見られる非線形伝導とよく似ている。この結果は、この系の絶縁性を解明する鍵となる実験と思われ、そのメカニズムを次年度に明らかにしたい。
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Research Products
(7 results)