2011 Fiscal Year Annual Research Report
液晶におけるパターン形成の解明-非平衡揺動定理と時空カオス-
Project/Area Number |
21340110
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐 昌一 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20112295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 芳樹 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教 (70274511)
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Keywords | 非線形物理学 / 非平衡統計物理学 / 散逸構造 / 非平衡開放系 / 時空カオス / 揺動定理 / パターン形成 / 液晶 |
Research Abstract |
これまでの散逸パターンの研究は非線形動力学的観点から行われてきたが、散逸パターンが形成されることによって非平衡開放系がどのような性質をもつようになるかを知るためには、熱統計物理学的観点からの研究が必要である。特に、平衡系近傍の熱揺らぎに代わって、非平衡開放系ではマクロ非線形揺動(時空カオス)が重要な役割を果たす。そこで本研究では、ソフトモード乱流(SMT)をはじめとした多様な時空カオスを呈する液晶電気対流を対象として、マクロパターンの揺動とそれに基づく輸送現象などを統計力学的な観点から研究し、非平衡開放系における揺動と物理的性質の間の普遍的原理を確立することを目的とする。 今年度は、SMTと欠陥乱流のパターン揺動の統計力学的性質を、時間相関関数を用いて明らかにした。SMTの空間平均された時間相関関数は、ガラス物質で見られるのと同様のKohlrausch-Williams-Watts (KWW)型減衰を示すことがわかった。また、制御パラメータを上げていくとKWW型減衰から指数型減衰へ遷移することがわかった。動的画像解析法を用いた波数ごとの時間相関関数については、まず時間相関関数から記憶関数を求める手法を確立した。時間相関関数が短時間の代数型減衰と長時間の指数型減衰の二重構造をもつことが明らかとなっていたが、今年度はさらにその境界が記憶関数の減衰時間とほぼ対応することを明らかにした。また、記憶関数の減衰時間は、SMTに特徴的な長距離構造に相当する波数でピークを示すことを明らかにした。 欠陥乱流の揺らぎに対しては、動的画像解析法により波数ごとの時間相関関数を得た。その結果から、ロールに平行な方向の揺らぎの中に周期振動成分が含まれていること、ロールに垂直な方向の揺らぎはロール間の圧縮と伸張で相関時間が異なる非対称性があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでは主にソフトモード乱流を対象として、多重構造や揺動定理など、時空カオス特有の統計力学的性質を明らかにしてきた。今年度はさらに、多様な時空カオスに対して普遍的な性質を調べるために欠陥乱流にも着手している。このように研究目的に対して順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が最終年度なので、これまでの成果を統合して時空カオスの揺動の普遍的性質の解明を目指す。特に、Lagrange観点(非熱的Brown運動)とEuler観点(パターンの観測)の結果を融合し、パターンの揺動が輸送現象にどのように反映されるかを明らかにし、それによって非平衡開放系・散逸構造の拡張された物性の確立を目指す。
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