2012 Fiscal Year Annual Research Report
液晶におけるパターン形成の解明‐非平衡揺動定理と時空カオス‐
Project/Area Number |
21340110
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐 昌一 九州大学, 大学院・工学研究院, 特命教授 (20112295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 芳樹 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教 (70274511)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 非線形物理学 / 非平衡統計物理学 / 散逸構造 / 非平衡開放系 / 時空カオス / 揺動定理 / パターン形成 / 液晶 |
Research Abstract |
散逸パターンが形成されることによって非平衡開放系がどのような性質(物性)をもつようになるかを知るために、マクロ非線形揺動(時空カオス)の熱統計物理学的観点からの理解が必要である。そこで、ソフトモード乱流(SMT)をはじめとした多様な時空カオスを呈する液晶電気対流を対象として、マクロパターンの揺動とそれに基づく輸送現象などを統計力学的な観点から研究を行っている。 これまで、SMTにおける微粒子の運動を観測する非熱的Brown運動によって、Lagrange的観点から時空間欠性の統計的性質を明らかにしてきた。今年度は非熱的Brown運動の詳細な観察を行った。その結果、微粒子は速い運動と遅い運動を間欠的に繰り返し、それぞれの運動が、対流ロール内・ロール間の運動と、SMTの空間パターンの特徴であるパッチ構造がグローバルに変化する運動に対応することがわかった。また、それぞれの運動の特徴を粗視化拡散係数を用いて調べ、遅い運動が異常拡散を示しているのに対し、速い運動がロール内の弾道的運動からロール間の異常拡散へ切り替わりが起こることがわかった。 ノーマルロールとよばれるストライプパターンの揺らぎによって欠陥が不規則に生じる欠陥乱流を、ノーマルロールの位相の時空変化としてとらえ、その揺らぎの統計的性質を自己相関関数を用いて明らかにした。位相は0から2πの範囲で変化するので一種の2次元XY系をなすが、熱揺動によって欠陥を生じる2次元XYモデルと異なり、時間の自己相関関数は振動成分を示すことがわかった。これは、ノーマルロールの揺らぎを生じる局所的なダイナミクスが、対流と液晶配向の相互作用によるHopf不安定性であることを反映しているものと考えられる。
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