Research Abstract |
結晶性壁の一次元細孔を有する[M(H_2bim)_3](TMA)・nH_2O(M=Cr,Co,Ru)内部に閉じ込めた一次元水の秩序化に関する熱的性質を,非晶性壁の一次元細孔を持つMCM-41シリカの結果と比較し,細孔壁が結晶性か非晶性かで,細孔水の低温秩序挙動は決定的に異なることを明らかにした。前者では界面水から結晶化するのに対し,後者では界面水は無秩序な状態で内部に氷が生成する。また,非晶性壁を有する二次元シリカ(膜厚d=3.7,2.9,2.7,2.3nm)内部に薄膜水を閉じ込め,熱測定を行った。内部に閉じ込めた二次元薄膜水は,膜厚の減少とともに,融点降下することを見いだし,二次元水の状態図は,MCM-41シリカ細孔内の一次元水とは異なことを明らかにした。また,細孔壁の近傍に存在する二次元界面水のガラス化を観測した。そのガラス転移温度T_gは膜厚に依らず,134Kであった。この値は,一次元界面水の細孔径無限大の極限としての界面水のT_gに相当するものと理解される。このような形状制御した細孔水について,その挙動が実験的に明らかになったことは,今後の水の科学にとって重要である。さらに,水にメタノール,エチレングリコールを添加した水溶液を細孔内に閉じ込め,ガラス転移挙動を追跡した。T_gの組成依存性は,ともに純水近傍で急激な上昇を示し,その付近で水に特有の構造が急激に発達あるいは崩壊を示すこと,したがってその領域ではGordon-Taylor則が成立しないこと,純水のT_gは165Kあるいは214Kにあることを明らかにした。 一方,高圧熱測定の準備として,サーモモジュール(thermo module)を利用した熱量計の開発を行い,150MPaまでの高圧下の測定が可能であることを確認した。
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